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北海道:札幌~ススキノ5~
さて、缶を温めるわけだが…
まずは、中身が飛び出さない様に開けておくことをお勧めする。
蓋をしたまま湯煎するくらいならいいが…直火はやめよう。
絶対ではないが、結構な確率で破裂する。
うん…ボンとね!
さて、では実践。
プルタップを引いて開けた大和煮の缶詰を、火から遠ざけておく。
チョロチョロと揺れる火からは遠ざけ、たまに当たる程度の位置が良い。
近いとすぐに焦げ付くのよねー。
さてさて、
ほどなくして、大和煮のゼラチンが溶け…肉がトロリと泳ぐ。
うむ…
新鮮な肉はもう二度と食べられないかもしれないが…これはこれでうまいはず。
缶詰の種類も廃墟を漁ればいろいろあるものだ。
種類が豊富で…どこか似たような味を除けば、毎日食べても新しい発見がある。
「さぁて…そろそろ」
軍手を装着し、アチチと悲鳴を上げながら缶詰を火から下げると足元のディナーたちの列に加える。
うむ…フルコースね!
さて、いっただきま~す。
パンっと手を合わせて食事開始。
まずは、と。
レトルトのご飯を開ける。
フワァっとした良い香り。
レトルトのご飯も色々種類があるが、このメーカーの奴が一番旨い気がする。
ちょっと茹でただけでホカホカのご飯になるのだから優秀に違いない。
しかし、いつまで食べられるものか…
最近では、
包装が劣化したためか、カビの生えたご飯も時々見つかる。
米を生産する人類が死に絶えた今…レトルトのご飯くらいしか良いコメは手に入らない。
まぁ、生米はまだゴロゴロとスーパーやら、コンビニの廃墟に眠っているので古米であることを我慢すれば当分の間、食べられるだろう。
それすら食えなくなれば…あとは缶詰の米だろうか。
気にして探したことはなかったが、たしか災害時の緊急持ち出しグッズなんかに入っていた気がする。
パンだとか、フリーズドライのおかずと一緒に3日分くらいの食糧が一緒になっていたはずだ。
今度ホームセンターの中を探索するときにチェックしておこう。
別に時間に追われているわけではないしね。廃墟の探索は暇潰しにはもってこいなのよ。
拠点となる家を見つけて、
心行くまでゴロゴロしていてもいいが、こうしてバイクで彼方此方を見ても割るのもまた面白いもの───…おっと、
ご飯ご飯。
ボンヤリとお米の事を考えている内に食事まで忘れてしまうところだった。
さてさて、ご飯だけだと淡白だからね。
これこれ。温めた肉の缶詰!
缶詰をひっくり返し、ドサリと肉をご飯に乗せると肉汁とも調味エキスともつかない茶色の液体がご飯に絡んでいく。
うむ…
実に旨そうだ。
これをーーーーーー……
掻っ込みます!!
グァツグァツぐぁつぐぁつ! とね。
んんんんんーーーーー!!!
旨し!
旨し!!
旨し!!!
プフゥ…ガツガツ。
うーむ。肉の大和煮は実に旨い。
元々質の悪い肉を濃い味で誤魔化すためだったとか?
だが、その濃い味というのが実にいいのよ!
ご飯の淡白な味にこの濃い味がベストマッチする。
何にしても「ご飯」とは実に素晴らしいものだ。
大抵の濃い味のおかずとベストマッチするのだから堪らない!
そして、ペロリと半分を平らげると──────次はコレぇぇ!!!
カップ麺のKINGサイズですよ。
デッカイですよー。
カロリーも半端じゃないですよー。
……
…
太る?
──知らぬ。
塩分高い?
──知らないってば。
炭水化物と炭水化物?
──だからどうした。
これが旨いんじゃぁぁ!!
ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!!!!
と、まぁ豪快に一気食い。汁がベッチャベチャに飛び散り、音が下品極まりないが…
誰も見てない誰も聞いてない誰もいない──
故に気にしない!
キニシナイ!!
ふっふぅぅい!
…寂しくなんかないよ…
ホントデスヨ───
うん、
ゴメン。嘘です。
寂しいのでちょっと、こう…はっちゃけてるだけです。
ズルルルル…
チュルン…
ゴクゴク…ぷふぅ。
うん、
うんうんうん、
旨い!!
やはり外れがない味だ。
カップ麺て、なんでこんなに旨いんだろうね!?
日本人、優秀すぎるでしょう…
えーい、
世界が滅んでも美味しいなんて…日本人すっばらしい!!
ふっふぅぅい!
ゲェェップ…
お、デッカイのが出た。
うむ。
旨いけど、やはりKINGはガッツリ来るわね。
今度はBIGにしよう。
さて、
麺は食いましたよ~。
腹は八分……かな?
一気食いしたから満腹中枢が追い付いていないだけだろうけどね。
まだ食います!
はい、ここで登場。
さっき半分食べた「ご飯」ちゃんです。
これをーーーーーーーー……ブッ込みます!
ボチャンとカップ麺にね!
そんでもってこれをーーーーーーー…掻っ込みます!!
ジュゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ……ーーーー!!!!
グビリグビリ…
ゴキュ…
うむ、
喉越し最高っっ!!
うっまいわ!!
旨いわ!
美味いわ!!!
ラーメンINライス…最高!
とは言え…、
げふぅぅ…流石に食い過ぎたな。
反省反省猛省もうせいへん…
ゲフ…
あーーーーー食った食った。
旨し!
さて…
飯も食ったしーー…
お次はぁぁぁ…
……
…
飲むか!
呑むか!
のむか!
ひゃっふぅぅぅぅい!!
レッツパーーーーティ!!!
アーンド、ドリンクタイム!!
さーて、腹も朽ちたし…このまま酔いつぶれて朝を迎えようじゃないか。
だって、とっても暗くて怖いんですものーーー
部屋の中には骸骨ちゃんがいらっしゃるし…
だからね、
飲むのよ。
飲んで忘れるの。
イェス!
さて、
どーれーにーしーよーおーかーなーっと、
「ディン!」(←効果音:自分の口で言ってます)
ガサガサと食糧カゴから取り出したのはウィスキー! のコンビニで一番高い奴。
だって取り放題ですもの…高いの持ってっちゃうでしょ? ぶっちゃけ味に違いってそんなにわからないんだけど…
いいじゃん。
元々は庶民なものでーー!
さて、確保しておいたグラスをペットボトルの水で軽く洗いティッシュで拭う。
それを「フッ」と一息かけて、ティッシュ屑を飛ばせば準備オーケィ。
カリリリと音を立ててウィスキーのメタル包装を開放…途端に香る芳醇な香り。
いやー常温のウィスキー…良い香りするわ。
それをぉぉぉ、
豪快にいっちゃいます!
ほぉれそっっと──
トゥクトゥクトゥク……
琥珀色の液体がグラスに満ちていく。
ウィスキーのショットグラスではないので、量的には少々オカシイ…けど、いいのですよ。
酔いつぶれても明日仕事があるわけじゃなし。
すーぐに酔えば、この暗くて怖い札幌の街のことも忘れられる。
おっと、せっかくだから音楽流しましょうかねー。
スマホを取り出すと小さなスピーカーと接続。
これ、小さいけど持ち運びが便利で使いやすい。
常にコレだけは物容れに入れておくのですよ。
SDカードも大容量の奴を使っているので音源には困らない。
いっぱい詰め込んでます。
ん?
インターネットはもうないから、個人のPCからいただいたりしましたよ?
ま、最新の音楽は──世界が終わった日で更新されることもなく、常に最新のままだけどね。
発信してくれる基地局もなし。
発信する人もいない。
でも、音楽は消えてなくなるわけじゃない。
電気と記録媒体さえあれば世界どころか宇宙でだって聴ける。
ま、宇宙に行く手段なんて今後人類が手にすることはもうないだろうけどね。
あー…可哀想なお空の人よ…
宇宙ステーションとかって…
生存者がいても、多分餓死してるよね?
閉鎖空間で通信が途絶え…
補給もなく…
何れ尽きる食糧…
こわ!!
こわ!!!
多分、阿鼻叫喚の地獄絵図になったのではないだろうか?
人類最高峰の頭脳と体力の持ち主が行くというが…
飢餓の前にそれは何の意味があろうか?
宇宙は残酷だろう。
あーやだやだ。
地球でよかった。
宇宙は人類の行く場所じゃないのよ。
今や地球も似たようなものだけどね。
宇宙空間で役立つのは人工衛星くらいなもの。
宇宙に浮かぶ人工衛星だけは今でも位置情報を教えてくれる…
人類の残滓は中々消えないものだ。
さて…
いい感じにお酒の匂いが嗅覚を殺してますよ…
お楽しみタイムはこれからです!
うふふーー
じゃ、レッツ・ミュージック───
本日はぁぁぁぁ…
……
…
軍歌でも聞きますか!!!
ゾビエトのマーチがいいね。
最近軍歌に嵌ってます。
ポップミュージックは、流行しなくなったら流行歌じゃないのよね。
それなら、カビの生えた音楽もありじゃない?
お気に入りの音楽を探すうえで、色々試しているのだが、暗く恐ろしい空間では何故か勇壮な軍歌を聞くと落ち着くことができるのだ。
とくに外国のはいい…
日本語の歌詞を聞くと───人が恋しくなるのだ。
外国ならなんとなく──ここではないどこか…元より知らぬ世界の話なので、あまり気にならないのだから不思議だ。
スイッチ、オン!
……
ジャージャジャーン♪
ジャジャーン♪
うむ。
勇壮だ。
どう聞いてもラスボス戦の曲な気がするが、あの赤い星の国はこういうのを聞いていたんだな…当時。
そら、アメリカと正面切って睨みあいするわけですよ。
じゃぁ、
お酒タイムと行きますかね!
ウラァァァァァァァァァァって、ねー。
ウォッカじゃないけど、これもまた十分に強いお酒。
ふふふ…さて、まずは一杯。
クピリ…と表面を舐めるようにウィスキーを口に運ぶ。
途端に喉が焼けるよな感覚と鼻を突きぬける強烈なアルコール臭───!!
っっくぅぅぅぅ!!!
堪らない!!
んんーーーーーーーーーー!!!
マズイ!!
超マズイ!!
お酒って、
まっずぅぅぅぅぅぅい!!
お酒って、超マズイ!!
……
けど、旨ーーーーーい!!!
味は不味いけど…旨い!!!
お酒最高っっ!!
黄昏の世に乾杯ってね! ──チィン
スマホにグラスを充てて一人で乾杯だ。
さぁて、素酒ってのも味気ない。
それにマズイものはマズイのだ。
酒の味は単純に甘い、辛いとかの分類で行けば間違いなくマズイものだ。
あれを脳内のよくわからん部分で理解して、旨いという文化情報に置き換えるのだから人間ってのはつくづく変な生き物だ。
少なくとも、人間以外の哺乳類だとかは…酒なんぞまず飲まない。
まぁ、今はその哺乳類もいないだろうけど…いるとすれば海洋生物くらいかなー。
あ、ダメ。しんみりしちゃう。
考えない考えない!
オツマミ、オツマミぃぃぃ、と。
食料籠から氷下魚の干物を取り出す。
真空上のパックをピリリリリーと破ると、プーンと魚臭い匂いが溢れる。
…嫌いな臭いではない。
むしろ、膨れたはずの腹でありながら食欲をそそるものだ。
このまま食べてもいいが、
「ココは炙りましょう」
ニヒヒと、笑いつつ氷下魚を六法全書の焚火で炙る。
尻尾を持ち、チリチリチリと軽く炙るのだ。
香ばしい匂いが鼻を着いた。
うむ…絶対うまい。
両面を炙ると、少し焦げ目がつき、実に旨そうなソレになる。
「これで不味かったら犯則ね」
さて、実食…
チマチマと千切らずに豪快にガブリと半分程食いちぎる。
炙ったおかげで柔らかくなり香ばしさが鼻を抜けていく。
ジュワっと僅かに残る油が口に広がり塩っぽい味と魚の風味が口に中で弾ける…
ぅぅぅううんま!!
旨っ!
やばい、スッゴイ旨い…
ココはアレだ。
………
……マヨネーズが欲しい!!!!!!
もっかい言う。
マヨネーズが欲しい!!!!!
もっかい言う。
マ・ヨ・ネー・ズ・が・欲・し・い!!!!
しまったなー…持ってきてない。
未開封のマヨネーズならまだ廃墟から持ち出した物でも十分に使える。
外国の瓶詰の奴はさらに長く使える。
が、日本の奴は一度開封すると、日が経てば味がグズグズになり生臭くて食べれたものじゃない。
そして、外国の奴はもっとダメだ。
あれはマヨネーズなのか!?
なんだあの甘いねっとりとした妙なペ―ストは…二度と食べないから!
って…言ってもないものはないしね、我慢我慢。
今度から小さなマヨネーズパックとか、小分けの奴を物容れに入れておこう。
油断して殆どサイドカーに積みっぱなしだ。
あー…でもないと分かると欲しくなる。
氷下魚を炙りつつ、ウィスキーをチビチビと呷る。
あー…絶対マヨネーズがあれば旨いだろうな…、
こう、お皿にマヨネーズを盛ってーの、グルタミン酸のあのダシをパッパッと掛けてーの……唐辛子ぃぃーを───そう、一味をこう、ですね…真っ赤になるまでパッパカパーと掛けてーの、
それをこうね、かき混ぜてーの、氷下魚に付けてーの、パクリんちょすると…
絶対旨い。
ぜったうまですよ。ぜったうま!
うん、変な略語を言っちゃう位には旨いと確信できる。
あーうん…食べたいなー。
そ考えつつも、次々に氷下魚を炙りムシムシと齧り、ウィスキーをチビチビと舐める。
スマホからは、「エリカ大好き行進曲」が流れている。
うん、「エーリカ!」か…いいね。口ずさみたくなる。
酒に濁った思考で、目がトロン…
ウィスキーはやっぱり強烈だなーと。
火が弱くなれば、本を焼べて火力を上げる。
パチパチと弾ける火に心安らぎ───
アルコールの臭いが思考を溶かし───
軍歌の調べが精神を安息へと導き───
彼女は、ゆっくりと瞼を落としていく……
暗い暗い札幌の中心地で、
白骨溢れるその街で、
誰もいない北の建屋で、
静かな寝息が響くのはそう遠くない頃だった───……
焚火の照り返しが、白骨のおみ足を照らし、彼女はとても、とても静かで優しい人。
お休みなさい…
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