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2.二人を繋ぐもの
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彼は大学4年生、
私は社会人一年目だった。
私たちが暮らす町は、新幹線で3時間ほどの距離。
学生の彼は金銭的に、
社会人の私は時間的に、余裕がなく…。
それだけでなく、遠くに出掛けるということは長時間を費やす訳で、厳格な親も結構なハードル。
そう簡単に逢えるものでもなかった。
それでも、3〜4ヶ月に一度くらいは、私が彼の元に行き、逢えなかった長い時間を埋めるように過ごした。
逢えば、離れ難くなる。
そしてまた逢えない日々が始まる。
その繰り返し…。
“ 平日に一度、仕事帰りに待ち合わせ。
休日は一日かけてデート ”
そんな友人達が羨ましかった。
逢えない時間、
唯一繋がる手段の家の固定電話はリビングにあり、話は家族に筒抜け、厳格な父の前では、長電話などできない。
私は百円玉貯金をポーチに入れ、近所の公衆電話へ。
凄い勢いで落ちる硬貨に、
二人の距離を思い知らされる。
ゆっくり話をしたいのに、硬貨が落ちるガチャンガチャンという音に、集中などできなかった。
二人を繋いでくれる電話なのに、その音に急かされ、残り時間がどんどん削られて行くことに苛立ちを覚え、目の前の電話が憎らしくさえなる。
硬貨が最後の1枚になった時、早口で別れの挨拶を交わし、それが終わらないうちに声は断ち切られ、「ツーツーツーツー」という無機質な音に変わることも度々あった。
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