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4.すれ違い
その後、「会えないかな?」
と聞いた彼に、
今度は私が嘘をついた。
「ごめんね、仕事忙しくて」
どんどん擦れ違っていく。
同じ空の下なのに、遙か遠く…
心まで遠距離になってしまった。
彼女が私に電話したことが彼に分かり、
確かに辛かったあの時、側で支えてくれて有り難いと思った。
でも、それ以上の感情はないし、関係もない。
事故のことは、心配させたくなかったから、言わなかった。
…そう釈明してくれたけれど…。
彼を信じられなかった訳ではない。
ただ、大切な時に側にいて支えられないこの立場が、とてもとても苦しくなった。
「もう完全に治ったし、今度、俺がそっちに行く。会って話したい」
「その辺りは忙しいから、難しいかも」
本当のことだったが、それを彼が信じたかどうかはわからない。
多分、信じてないだろう。
あの時、自分がついた嘘が、例え優しい嘘だったとしても、私を傷つけ信頼を失ったと、彼は思ってる筈だから…。
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