5.儚い約束

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5.儚い約束

「いいよ。取り敢えず行って待ってる。 来てくれなかったら、それが返事だと思って諦めるよ」 …諦めてなんか欲しくない… どうしてそう言えなかったんだろう? お互いを愛して大切に思う気持ちは何も変わらなかった。 だけど… 多分… お互いにどんどん苦しくなって行ったんだ…。 本当にちゃんと会ってこの関係を修復したいなら、時間が読めない日より、確実に私が仕事を休みの日に約束すれば良い話だ。 なのに、そうしなかったのは、運命がお互いを呼び合ってくれるのか、 賭けてみるしかもう方法がないような気持ちが、どこかにあったんだと思う。 約束の日。 話の行く末がどうなろうと、 ただ彼に逢いたいと思った。 だけど、その日に限って起きた終業直前の仕事のトラブル。 往々にしてそんなものだ。 何とか同僚と手分けしてトラブル処理を終えた頃には、約束の時間を1時間半過ぎていた。
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