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6.今、どこにいますか?
泣きたくなる気持ちを抑えて、約束の場所へと走る。
この運命の悪戯が、私達の未来はもうないことを示しているのだろうと思いながら…。
…もう待ってる訳ない。
…お願いだから待ってて。
二つの言葉が、グルグルと頭の中を巡り、心を乱す。
約束の場所に、彼はいなかった。
当然か…
もう約束の時間を二時間近く過ぎていたのだから。
もう帰りの新幹線に乗ってる頃?
いや、もしかしたら、さっきまで待っててくれて、たった今立ち去ったばかりかも知れない。
そもそも、この地に詳しくない彼が、場所を間違えたのかも知れない。
きっとまだどこかに…。
自分に都合の良い理由を考えたところで、もう遅い…。
「今、どこにいますか?」
そんな言葉はもう届かない。
私が来なかったのは、それが答えだと、彼はこの恋に幕を引いたのだろう。
私の本物の感情は、もう彼に届かない。
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