16人が本棚に入れています
本棚に追加
その頃の母の気持ちを考えると胸が苦しくなるけれど、
母には悪いけど、
私はそれで良かった…と思った。
だって、その別れがなければ、その後、母は父と出会わなかった訳だし、
“ 私 ” は生まれなかったのだから。
「今、どこにいますか?」
「今でもこの街で元気に暮らしていますか?」
バスの車窓から昔見たかも知れない景色を眺めながら、母は彼のことを思い、心の中で問い掛けているのかも知れない。
私には二年の付き合いの恋人がいる。
スマホで交わす「今どこ?」
に感謝なんてしたこともなかった。
今では当たり前になってしまった人と人とを繋いでくれる
“ 手の中のパートナー ” に、改めて感謝しなければ…と思った。
母のその想いをそっと胸にしまい、もうすぐ私は、遠距離恋愛を実らせ、彼のもとに嫁いで行く。
【完】
最初のコメントを投稿しよう!