はじめに:猫と暮らす――までの、あまりに遠い道のり。

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はじめに:猫と暮らす――までの、あまりに遠い道のり。

 みなさまは、こんにちは。  倉嘉ルチルです。    突然ですが、みなさまは猫と暮らされたことがありますか?  私は皆無でした。  というのも、母が大の猫嫌いで――家に猫を上げる、というのが不可能に近かったのです。  家族の同意が無ければ、猫と暮らせませんね。  私は動物全般が大好きで、以前暮らしていたところが田舎だったこともあり、オーソドックスな熱帯魚やクワガタムシやカブトムシはもちろんのこと、ヤドカリやアカハライモリ、鶉や烏骨鶏などもお世話してきました。  母は猫は嫌いだったのですが、実は犬が大好きで、かつては秋田犬の雑種を飼っていたこともあります。  このとき、学生だった私が犬の散歩の係だったのですが……  大型犬の散歩は、一時間コースは当たり前で、時には二時間に及ぶこともあります。部活から帰ってきて犬の散歩に行き、とっぷりと日が暮れるまでひたすら歩き続ける、なんてこともざらでした。  大型犬、スタミナが半端ないです。  しかも力がとてつもなく強いので、慣れない人が散歩をすると引きずられたり、急な動きに対応できずに腰を傷めたりしてしまいます。一度、通りすがりの犬とガチで喧嘩をしてしまい、流血覚悟で止めに入ったこともありました。(普段はいたって温和な性格の犬なのですが、何かがお互いに気に入らなかったようです)  そんなこんなで、動物万歳な環境で育ってきた私にとって、なんといっても憧れの存在は、猫でした。  猫は散歩に行かなくていいし、物静かで思慮深くきれい好き、というのがハートにずきゅんと来たのです。  が。しかし、母は猫嫌い。  何とか猫と暮らしたいと願った私は、あの手この手で母を説得しようとしたのですが、母の意志はとても固く、猫は断固拒否の姿勢を貫いていたのです。  母を懐柔しようと、猫の番組を一緒に見て「うわ〜、猫はかわいいね」とことさらに声を上げ無意識下に「猫は可愛い」といういうワードを印象付けてサブミリナル効果を狙ってみたり、猫の本を広げて見たりと手は尽くしたのですが、「猫はだめ」の一点張りでした。  ですが――  願い続ければ、いつしか風が吹いてくるものです。  母の態度が軟化する事件が起こりました。  きっかけとなったのは、耳が桜の花びらの形にカットされているため俗に「さくらねこ」とも呼ばれる、地域猫さんでした。              
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