#1 僕は、あの日を忘れない。

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#1 僕は、あの日を忘れない。

僕は、あの日を忘れない。 澄んだ朝の空気の中、透明な光の下で、 君は、あふれる涙を、ぬぐおうともせずに、 寮の裏庭に簡単に作られた、小さなお墓の前 で、うずくまっていた。 そして声も出さずに、か細い肩をずっと 震わせていた。 僕は、あまりにも、いつもの君と違うので、 見間違いを、しているんじゃないだろうか? と、自分の目を疑った。 (りん) として、優しく、美しく面倒見の良い君。 クラスメイトや先生からも、信頼の厚い A組の委員長、長谷川ゆう君。 転校生の僕にも、困っている事はないかと、 いつも優しく如才(じょさい)なく尋ねてくれていた。 その時偶然、目の前にした光景の中の彼は、 あまりにも幼く、あまりにもか弱くて、つい 手を取って、抱きしめて、慰めたくなる程 だった。 そして、それは・・・。 僕の心の中の何かが、はじけた瞬間だった。 その日以来、ボクの胸から彼のその顔が、 離れなくなった。 彼と初めて出会ったのは、僕が、この学校に 編入してきた日の朝だった。             先生について入った1年A組。優秀クラス。 ホワイトボードを背に、クラスを見渡すと 窓側の後ろの角の席に、一人だけ、みんなと 違う空気を、かもしだす存在がいた。 『うわっ。男子校なのに、女子がいる?? なんでこんな・・.。綺麗。天使みたいだ。』 これが、初めて、彼を見た時の僕の 第一印象だった。 でも、きちんとボタンが留められて、 地元で人気の、自分と同じ男子の制服を、 着こなしている。 やっぱり男子なんだと納得するまで、少し かかるほど彼は、上品な、まるで天使の様な 端正な顔立ちをしていた。 先生から、クラスメイトに紹介された後、 「長谷川」と呼ばれて「はい」と答える その声も、ハッキリと凛として、(すず)涼やかで、 相当、頭もよさそうと、変な所に感心した。 「転校生の世話、よろしく頼むぞ」と言って 先生は、僕の席を、彼の隣にした。 2月という中途半端な編入は、珍しいらしく 担任の先生も僕を気遣って、委員長である 彼に、しっかり面倒見てやるようにと、 頼んでくれていた。 そして、このクラスの中に、もう一人。 初めてのクラスで、僕の注意を、引いた者が いた。 それは、小学生の頃からの親友。 田丸英二だった。 今回の編入も、彼のおかげだった。 「よっ!きたな。」 あいつは、声を出さずに、満面の笑顔で、 小さく手を挙げて、僕に合図をした。
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