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#3 あいつは、誰?
「何?なんて言ったの?」
聞き返す僕に、英二は、ばつの悪そうな顔を
して、声を殺して、僕の耳元で言う。
「だから、あいつは!
委員長のxxxの山田つよしっていう奴」
一番聞きたいところが、一層、小声になって
もごもごとして、聞き取れない。
『 何?xxxって。』
お昼休みの食堂で。
僕達の席の前方に座っている委員長の姿が、
目に入った。
食事を終えた彼の横に座って、自然に
親し気に肩を組み、話をしてる奴について、
隣で食べている英二に、尋ねると、そう
答えた。
「とにかく!
委員長は、表の顔と裏の顔が、あるんだよ。
気をつけた方がいいよ。近づかない方が。」
英二は、少しムッとしながら、そっけなく
言った。
そしてこの話題を、変えたい様子で、自分が
部長をしている美術部の話をした。
「それより圭大。悪いけど。
放課後、美術部に来て、絵のモデルになって
くれないかな?」
中途半端な時期で、未だどこにも入部届を
出していない僕は、快く引き受けた。
その後も、話題が、かわっても・・。
『 XXXって何?裏の顔って?』
ずっと、そのモヤモヤは、僕の頭の中で
うごめいていた。
だけど、あえて、機嫌の悪い英二に問う事は
無かった。
「なんで、そんなに、知りたいの?」
という問いを、英二から聞き返されるが
怖かった為だった。
もし、そう聞かれても、答えられない
自分がいた。
『 何なんだろう。この気持ち。
他のヤツが、委員長にふれている姿を、
少し、見ただけなのに。
嫌だ。ひどく不快になる。』
放課後、美術室には、数人の部員たちが、お
互いの顔を向かい合わに座って描いていた。
あ、同じクラスの中川君も、美術部だった
んだ。
そうか。
部員が11名で、奇数になるので、僕が呼ばれ
たんだな。
英二の前の椅子に腰かけて、指示を待つ。
「いいよ。自由に、座っていてくれて。
顔を、描くだけだから。」
英二は、真剣な表情で、僕を見つめ、一心に
デッサンの鉛筆を、走らせる。
熱いまなざしから、いかに集中しているのか
が分かる。
英二の顔を見つめながら、僕は、ただ無言で
座り続ける。
あんなに、背も小さかったのに・・。
大きく成長した幼なじみに、感慨を持つ。
背は、今は僕よりも大きいな。
176センチくらいかな?
体も、均整がとれて、締まっている。
顔は、あの頃とあまり変わっていない,
童顔で、清潔感と爽やかな印象を、与える
感じ。
小さい頃、相撲大会が近所で毎年あって、
一緒に出て闘った時は、3勝1敗で僕の勝ち
だったなぁ等と、どうでもいいことを、
考えながら・・・
ふと。本当に何気なく、ふと・・。
関係ないのに、委員長の顔が、頭に浮かぶ。
まただ。
本当に、どうかしてる僕は・・。
心の中で、[[rb:狼狽 > うろた]]えた。
と、その瞬間。
「けいた、どうした?疲れた?」
と英二の声が、かかる。
「いや。何でもない。大丈夫。」
その英二の反応の早さに驚きながら、僕は、
自分の動揺が、顔にまで、出てしまって
いた事に、気づいた。
「一旦、休憩しよう」
英二が言うと緊張感がとけて、部室は、
和やかな雰囲気になった。
その後、夕方の帰宅を促す放送を聞いて、
僕達は道具を片づけ、荷物をまとめて、
部室を後にした。
「明日も、いいかな?」
「うん。じゃまた。」
分かれ道に来て、お互いの家へと別れた。
家に帰っても、グルグル。グルグル。
頭の中は、疑問でいっぱいだった。
委員長の裏の顔って?
あいつは誰?
なんで、僕は、こんなに気になるの?
「はぁぁ。」
帰宅してからも、僕は、無意識に、
考えこんでいた。
そんな僕の問いに、明確な答えを出したのは、
僕の大きなため息を、聞きつけた、
まさかの僕の妹だった!
「それは、恋でしょ。お兄ちゃん。」
へ?
こともなげに言う妹に僕は、驚きを、
隠せなかった。
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