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#4 それは、恋です。お兄ちゃん
「へっ・・!」
妹の千恵里(ちえり)は、最近、中学生向けの
雑誌の専属の”読者モデル”になった。
有名モデルクラブからも、スカウトがあった
らしいけど、見かけと違いこいつの目標は、
堅実な公務員と結婚して、豊かな老後を、
送る事なので、勿体なくも断っていた。
でも、お小遣い稼ぎに、読者モデルをしたり
している。
名前はもじって、チェリーちゃんw笑える。
顔は、まぁまぁいけてるので(近所では、
可愛いと有名らしい)
小学生の頃から、男子に人気だった。
友達にも「うらやましい」と言われたが、
何がいいのか、わからない。
うちでの妹は、写真に写っているのとは、
全く別人で、本当は、あざといネコかぶり姫
だし。
そんな姫が、夕食後、僕の部屋に、わざわざ
やってきて、ベッドに、腰かけ話し続ける。
「お兄ちゃん、転校して2ヶ月近くなるけど。
どぉ?慣れた?」
「うん。まぁな。」
「最近、夕飯残すでしょ?
お母さん心配してたよ。転校させてよかった
のかしらって。」
『お母さん』『心配』このフレーズは、僕に
とって殺し文句だ。
父が病気で亡くなってから、どうやって、
家庭や家族を守ろうかと思案している僕に
とって、僕自身が、母の心労の原因になる
事なんか、許されない。
「実は・・。」
僕たち兄妹は、多分、他の兄妹と違って、
血が濃いというか、絆が強い。
父なき後、母が仕事で遅くなる日は、兄妹
二人だけでご飯を作って食べたり、宿題を
教えたりetc何でも話しあえる仲だった。
兄妹というより、同志だった。
僕は、恋愛に関しては、数段も上の妹に、
情けないが、現状を、正直に相談した。
「それは、恋です。お兄ちゃん。
良かったね、そんなに好きな人が出来て」
千恵里の満面の笑顔は、それが、彼女のマジ
な答えだという事を、表していた。
そして冒頭の僕の「へっ・・!」である。
打ち消しても打ち消しても、同じ結論に至る
~そう。僕は、委員長に恋してる。~
言われる前に、その本音に、抵抗しながら、
実は、感じていた。
妹は、思春期のくせに、兄が、自分と同じ、
男子高校生に恋してる事に、なんの違和感も
不快感も、ないんだろうか?
「良かったね」といった顔をまじまじ見る。
妹は、クラスになじめない、勉強ついていけ
ない、いじめ等の深刻な悩みを予想していた
ので、それ以外は、OKなんだそうだ。
「恋愛のことなら、任せなさい!」
恋愛コラムもたまに書いているチェリー先生
は、胸を叩いて、ドヤ顔をする。
ちなみに。
家では、ジャージばかり着る、こんなラフな
妹も、外では、白いレースのワンピースに、
キラキラ潤んだ瞳を、上目遣いにして、
ぷるぷるの唇で、“天使の表情” を作る、
あざと姫であり・・。
”これでおちない男はいない!”と豪語する
恋愛マスターである。
「それで、相手の人には、恋人はいるの?」
「いつアプローチするの?」
発展家の妹は、どんどん先へ進もうとする。
・・・・まてまて。思考が追いつかない。
「男同士でも、いいの?本当に、進めて?」
「だって、お兄ちゃん、恋する気持ちは、
止められないでしょ?
諦めたりできないでしょ?
何も手につかないで、退学になったら困る
でしょ?お母さん」
でた!キラーフレーズ『困る』『お母さん』
・・・全面降伏。
「・・はい、わかりました。」
・・・まぁ。
すっきり告白して、ぱっと砕けて(笑)
元の勉強や柔道に戻れる様に、努力するさ。
僕たち兄妹の会話は、お菓子を挟んで
深夜まで続いた。
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