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「ゆめ、散歩行くよ」
あたしはムクっと起き上がった。蓮がリードを持っている。あたしは慌てて逃げた……がすぐに捕まった。
あたしはリードが嫌いだ。締め付けられるような感じ。蓮や蓮より年下のちぃ兄はつけなくていいのに、なんであたしだけ?
でも、まぁいっか。あたしはブルブルっと体を震わせて玄関へと向かった。
早くドア開けてーと必殺・うるうるお目目で訴えると、蓮は笑いながらドアを開けてくれた。涼しい外の空気があたしを待っている。
今日は公園にレッツゴーだ!
テクテクテク……今日はいい天気だ。顔を上げると真っ青な空と一筋の雲が浮かんでいる。その時、蓮と目があった。ねぇ、蓮、お散歩楽しいね!
いつも通り、公園の中に入るとふと気になる人がいた。
お兄さんは不思議な乗り物に乗っている。大きな椅子みたいだ。お兄さんは困惑したように、そしてどこか悲しげに空を見上げている。いてもたってもいられなくて、グイグイと蓮を引っ張った。
「ゆめ! なに?」
いいから、ついてきて!
あたしはそのお兄さんに飛びついた。ねぇ、どうしたの? 大丈夫?
「すみません」
蓮が声をかけるとお兄さんはびっくりしたようにあたしを見下ろした。あれ? 気付いて無かったのかな? 思わずくぅん、と声を洩らす。
蓮とお兄さんは何やら話していて、蓮はお兄さんの隣に腰掛けた。あたしもつられて腰を下ろす。お兄さん、どうしたのかな……笑って欲しくて、あたしは尻尾をフリフリしながら笑顔を振り撒く。あたしの笑顔はかわいいってよく言われるもん、きっと元気になれる!
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