佐藤さんとサト君

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「大丈夫? いやーごめん、まさか大爆発するとは。予定ではその場でプチって潰れるはずだったのに」 「イッテェ……」 「頭とか打ってないなら大丈夫だとは思うけど。でも凄く飛んだね、こっちがビックリしたよ僕はなんともないのに。あ、やっぱりちっちゃいからよく飛んだ……あいたぁ!」  倒れながらも佐藤の脛に思い切り蹴りをいれるとゆっくりと起き上がる。なるべく正面、アレがいたところを見ないようにして立ち上がる。  何もないとは思うが悪霊たちでさえ血を噴出しながら消えていったのだ。もしかしたらそこら中ドロドロのぐちゃぐちゃかもしれない。もう一秒だってこんな所いたくない。 「予定よりだいぶ狂ったけどお疲れ様。君の協力のおかげでアレにトドメもさせたし、これで大丈夫でしょ。ちなみにアレが何だったのかとか僕がやった対処法とかイロイロ聞きたい?」 「いらねえよ、知りたくもない」  げんなりしてそういえば、佐藤は「それで正解」と言った。ドラマや小説に出てくる名探偵のように、事件の背景から思惑から何もかも紐解く必要はない、むしろしてはいけないのだと言う。法も物理的手段も通じない霊とのかかわりに終わりはない。下手をすれば一生つきまとわれるし、命を落とす事もある。 「深追いさせないなら何で俺に手伝わせようって思ったんだよ」 「遠めに見て何も知らなさそうだったから、一応先輩からのレッスンかな。見えないふり、聞こえないふりをしているうちはいいけど、変に正義感に目覚めてゴーストバスターとか始めたら危ないから。まあさっきも言ったように予定よりてこずっちゃってスパルタになっちゃったけど」 「……」  要するにあぶなっかしく見えたという事だ。余計なお世話、とは言えなかった。確かに自分に何か特別な追い払う力があったら片っ端から祓っていたかもしれない。姿は見えなかったが、あの黒い何かは明らかに対処できるレベルではなかった。自分なら何とかできるかもと単身乗り込んだりしていたら間違いなく死んでいた。 「よし、まずはここを出よう。報酬の残りも渡さないとね」 「いい。レッスン料支払いってことで」
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