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「あれれ? あんな目にあったのにいらないの? 貰える物は恨みと悪霊以外はもらっておきなよ。どうせ夜回りやめないんでしょ、お金は必要じゃない?」
「その金でさっさと晩飯食ってろ」
そう言うと割れた窓からサイレンのような音が聞こえてくる。佐藤は耳に手を当てて「あー」と言った。
「何」
「パトカーだ。さっきの衝撃で窓割れたし、誰か通報したかな。ここにいると捕まっちゃうから逃げようか。いろいろ面倒だから」
それに関しては中嶋も異論はない。本当の事など話すつもりもないしまた補導されたら家からも学校からもごちゃごちゃ言われるに決まっている。
「よし、おじさんが晩御飯をおごってあげましょう! ファミレス行こうファミレス。ステーキおごってあげるからサト君は肉を食べてさっさと大きくなーー」
「警察には変な男に木刀と釘バットで襲われてこんな所につれてこられたんですって説明しておく」
「あ、いやなんでもないですはい」
証拠となるものを残さないよう回収するとわらわらと集まってきている野次馬の目に入らないよう隠れながらその場を後にする。しかし建物から出たところで中嶋は屋内から小さな声を聞いた。
佐藤は何も言わないし振り返らない。気づいていないのか、無視しているのかわからない。一瞬迷ったが、中嶋もそのまま振り返らずその場を離れた。関わるな、知ろうとするな。そんな佐藤の言葉が頭を駆け巡った。
『その後は?』
「その夜はメシ食って別れた。その後っつーと霊に関わる事で困ったときに連絡取ったかな。ま、三回程度だしその件が片付けばさようならって感じでそれ以外で連絡を取ることはしなかった」
事務所で一華が「何故中嶋はここに入ったのか」という質問から昔語りとなっていた。探偵事務所に霊が見える人間が三人もいるなど偶然とは言えないからだ。すると霊関係がきっかけで知り合ったと言い出会った頃の話となっていた。ただ、最後の声を聞いたあたりは省いたが。
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