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男と女のあれやこれや
遠藤一華は幽霊である。
享年十六歳、それはもう酷い死に方をした。
しかし幽霊である姿はそんな影響はまったくなく、通っていた高校の制服姿でまるで生きているかのように変わりのない姿をしている。霊感のある者が見ればあまりにも普通すぎて幽霊だということを忘れそうになるくらいだ。
幽霊である遠藤一華は憑りつく事ができる。意識のある人間には背後にくっつくだけだが、相手が眠っていればその体を乗っ取り操ることが多少できる。意識のある人間では難しいのは単純に相手の思考回路がすべて自分に入ってきて意識が負けてしまうからだ。自分の考えではないのに自分の考えであるかのような。
例えば対象者にとりついて次の交差点を右に曲がりたいと思っても、対象者がそこの交差点……で突然全裸になりヒップホップを奏でながら世界平和を叫びたい声が枯れるまで全力でと思ってしまったらそれにつられてしまう。とてもじゃないか信号を右に曲がるどころではない。
だからこそ、相手に意識がない時に限る。相手に霊感があった場合はまた話が別なのだが今は割愛する。
つまりは相手に思考回路がない、人間以外のものであれば容易にできるということだ。良い例は動物。犬猫鳥、なんでもいい。取り憑けばだいたいのことは上手くいく。
ただし動物は思考がない分本能に大変忠実で、本能には負けてしまう。相手を尾行しようと犬にとりついても縄張りにはいってきた犬がいれば威嚇からの文字通りドッグファイトが始まってしまうし、猫に取り付いた場合発情期だった日には大惨事となる。
次にどうにでもなるのが物だ。ただしこれは憑依と違って怪奇現象を引き起こす事となる。カメラには念写ができ、物を動かしたり落としたり音を鳴らしたりと様々な影響を出すことが出来る。以前電源の切れたテレビをつけて砂嵐を起こし叫び声を流した事があったがあれは凄く上手くいって自分で驚いたくらいだ。
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