佐藤さんとサト君

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 にこにこと語る男をじっくり観察する。年は三十~四十くらい、なんともノリの軽い男だ。名前もたった今考えた事を隠そうともせず胡散臭い事この上ない。関わらないほうがいいだろうとくるりと踵を返して立ち去ろうとするが、ガシっと肩をつかまれた。 「セクハラで殺すぞオッサン」 「まあまあ待ちなって。こんな夜に歩き回ってたらまた補導されるだけだ。家に帰れとは言わないよ、ちょっと手伝って欲しい事があるんだ。普通の人には見えないモノが見えちゃう中嶋聡クン?」  最後の言葉に目を見開き振り返る。そこには相変わらずニコニコと笑う男……しかし、よく見ると目は笑っていなかった。その目はこちらを射抜くように鋭い。 「お前マジで何」 「何でも屋だってば。何でも屋さんは何でも知ってます」 「まともに答えるつもりないならしゃべんな」 「まともに答えてるよ、噓言ってないから。君が普通じゃないのを知ってるのも夜な夜な業務で歩き回ってるとき見つけた賜物だよ。ま、お仲間だって言えばいいかな? 君と同じものが見えてるって事」  そう言うと佐藤は少し離れた電柱を指差した。チラリとそちらを見れば、そこには黒い人影がウロウロしている。 「君一昨日ここ通ったとき塩まいただろう? 変な事する子だなあと思ったけど、あれが道の真ん中で通せんぼしてたから端に追いやったんだよね。そんな光景を見てたからちょっと後つけて調べて声かけるタイミング見計らってただけ。四人組に絡まれてたときは助けようかなーと思ったら、君めちゃ強いからさあ」  あっはっは、と笑う佐藤は胡散臭さ全開だが、自分と同じように幽霊が見えているのは間違いない。見ていたのは本当に偶然だろうが、塩をまいたことだけでなくあの影が道を塞いでいた事まで知っていた。  自分の事をこそこそ調べていた事もあり信用したわけではないが、誰も自分と同じ存在などいないと思っていたのでほんの少し興味がわいた。無論それで良い人というわけではないのはわかっているが、このまま別れてしまうのはなんだか気が引ける気がしたのだ。 「……何か用」
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