佐藤さんとサト君

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 何やらウキウキと楽しそうな佐藤を横目に、小さくため息をつき中へと進む。御札もついているし、それくらいならまあやってもいいかと思った。  死んだらあの世に行く、そんな事当たり前だ。死んでいつまでも残っているほうが悪い。成仏したくてもできないなら成仏させるし、したくなくて残っているなら問答無用で成仏させる。  今まで幽霊に触る事はできず、どうすればそういう事ができるのかわからなかったのでこれもまた少し興味がわいたのだ。幽霊はどういう風に成仏……消えるのだろうか、と。 『いギャああああアアアアアアアアアアアアアア!!』 『いやああああ! やめてやめて来ないでこな……ギャああああ!』 「うん、順調順調。いやあ人手が多いと早く進むね! 今日はビールが美味いぞお!」 「頭おかしいだろそのセリフ……」  喧嘩慣れしていて相手を傷つける事など見慣れているはずだがさすがに絶句しドン引きしている中嶋と、幽霊を御札まみれの木刀でばっさばっさ斬り付けながら良い汗かいてますとでも言いたげな表情の佐藤。  幽霊はフッと煙のように消えるものだと思っていたが、殴りかかれば手ごたえもあるし(御札の力)相手は痛がって流血もするし(御札の力)断末魔を上げもがき苦しみながら塵のように消えていった(強制成仏)。  一回二回はいいが、数を重ねる毎にだんだん中嶋の良心にヒビが入り気力がガリガリと減っていく。現在中嶋少年の精神ポイントは半分値といったところだ。 「いやーセンスあるよ、プロになれるよサト君」 「殺人鬼のプロか」 「違うって。霊能力者として御祓いとか。ちゃんと修行すれば幽霊と戦う能力も磨かれるかもよ」 「絶対嫌だ」  そこだけは断固拒絶を示した。こんな事を生業にしたら速攻欝になって病院通いになりそうだ。そして霊感のある人間として病院は墓場以上に行きたくない場所でもある。あちこち霊まみれで、しかも死んだときの状態そのままの姿で動き回っている者までいるので吐きそうになるからだ。交通事故で体が変な方向に曲がっているものや、機械に体の一部が巻き込まれた系の霊などいた日には夢に出る。
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