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生きている年数の違いもあるだろうが、ここまで幽霊に対してにこやかにジェノサイドモードになれるものなのだろうかと幽霊以上に佐藤が恐ろしく感じてきた。
ふと目の前を何かが走り抜ける。咄嗟にバットを振りかざそうとしたが、ピタっと手を止めた。
少女だったのだ、それもかなり幼い。少女はクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ涙目でこちらを見て震えている。
これも、トドメを刺さなければいけないのだろうか……一瞬迷った。その瞬間、少女の表情が豹変し鬼のような形相で襲い掛かってくる。反応が遅れ、間に合わないと思った時に頬を掠めて後ろから木刀が少女を突き刺した。
『ギャああああアアアアアアア!!』
耳を塞ぎたくなるような断末魔を上げ少女の霊は消えていった。振り返れば、先ほどとまったく変わらない軽いノリの佐藤がいる。霊だったとはいえ、幼い少女の頭に木刀を突き刺したとは思えないまったく変わらない様子だ。
「ダメダメ、見た目に騙されたら。言ったでしょ? 幽霊に生きてる人間の常識は通じないんだよ。今のは病の苦しみと絶望から悪霊になってる子だから同情しちゃダメ。まあ見た目に騙されちゃうのは君がまだ若いってことでしょうがないかな。次は油断しないでね」
「……」
言っている事はわかる。しかしそれをはいそうですかと受け入れられるにはまだ時間がかかりそうだ。自分より弱そうな存在が消さないでと涙声で訴えてきたら、今の佐藤のように咄嗟に反撃などできない。
ここまで来たら付き合うが、金貰ったらさっさとこんな奴とはおさらばしよう。夜出歩くのも場所を変えるかしばらく控えようと思った。
あらかた片付け、幽霊の姿は消えたがまだ背筋のぞくぞくとした感覚は残っている。
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