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「君もわかるかい、この感覚。どこかにまだ残ってるね、たぶんそれが親玉だ」
「親玉?」
「浮遊霊たちを悪霊に変えて仲間を増やしてる大元さ。そういうのもいるんだよたまに」
「それ強いのか」
「そりゃあね、こんな御札程度じゃどうにもならない。でも大丈夫、ちゃんと準備してきてあります。この丸秘アイテムを使えば……」
ゴソゴソと何かを取り出しかざして見せた佐藤だったが、一瞬にしてそれは音を立てて割れた。同時に木刀とバットに貼ってあった大量の御札が塵となって消える。
「あれ?」
しーんと静まり返る。佐藤はポリポリと頭をかき、中嶋は眉間に皺を寄せて無言のまま佐藤を睨んでいた。
「丸秘アイテムの全貌を確認できないまま砕けたぞおっさん」
「いやー、参ったね。どうも見込み違いだったみたい。病院にいる悪霊なんてどうせ死んだ患者だろうと思ってたけどこりゃあ……」
そこまで言うと二人同時に振り返った。後ろから何かとてつもない気配を感じたのだ。
べちゃ、べちゃっと湿った音を立てながら何かが近づいてくる。それと同時にあたりは顔を顰めるほどの悪臭が漂い始め、生ゴミとは違った生臭さに口元を手で押さえる。
今まで感じた事のない悪意の塊のような気配にさすがに戸惑い足がすくんでしまう。今這いずって来るものを絶対に見てはいけない気がした。つう、と嫌な汗が流れる。
「あ、ヤバイ系だこれ」
「なんだよヤバイ系って」
「下手すると僕らもバキバキ喰われる系」
「バキバキって何!? 骨砕かれてる音かよ!?」
「逃げるよサト君。あ、足すくんで動けないかな?ちょっと失礼」
言うや否や、ヒョイっと中嶋を抱えて猛ダッシュする佐藤。後ろからはあの気配が追ってきているのがはっきりとわかる。抱えられて激しい振動に耐えながらも一応これだけは言わなければ気がすまない。
「何でお姫抱っこなんだよブっ殺すぞオヤジ!」
「助けてもらって文句言わない、僕だってできれば女の子抱っこしたかったよ! それにしても君は軽いね、ずいぶんとちっこいし。成長期だからたくさん食べないと大きくなれないぞ、あっはっは!」
「さっきのに喰われて死ね!」
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