佐藤さんとサト君

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 ダダダダ、と階段を駆け下りながら中嶋は全速力で逃げていた。後ろからは再びあの気配が追ってきているのがわかる。 「殴る事ないだろう、ひどいなあ!」  頭を摩りながら同じく全力で走る佐藤が文句を言った。 「何であのタイミングで腹鳴らすんだよ馬鹿じゃねえのか!」 「だって晩御飯クリームパン一個だったから仕方ないじゃないか。わざと鳴らしたわけでもないし」  そんなやり取りをしながら逃げていれば、後ろからブチブチという嫌な音がしている。何の音かは気になるが絶対に振り向いて確認などしたくない。  するといきなり佐藤に腕を掴まれ横に移動させられる。何、と思ったが次の瞬間自分がいた場所に何かが吹っ飛んできた。ベチャっと音を立てて壁にに叩きつけられる音がする。 「……っ」  まだ逃げ続けているのでそれが何かを確認することはできないし、したくもない。ただ当たっていたらとんでもない事になっていたであろうことはわかる。 「まさか自分の体をちぎって投げてくるとは、やるねえ。アレ当たったらどうなっちゃうんだろう」 「解説するんじゃねえよ、せっかく考えないようにしてるんだから!」 「え、そうなの? 君喧嘩とか強いのに意外にもメンタルは年相応なんだな、おじさん安心したよ」  パチーンとウインクをして親指をグっと立てる佐藤に心の底からイラっとし、その手を思い切り叩き落とした。 「年相応じゃなくて一般的な正しいリアクションだろうが!」  佐藤は暴力反対と言いながら叩かれた手にふーふーと息を吹きかけている。 「あっはっは。まあいいや、これ以上鬼ごっこしてても疲れる僕らの負けだ。そろそろ対処しようか」 「はあ!? 何か手があったのか!?」 「いや、今やってるところ。闇雲に走り回ってたわけじゃないよ、ちゃんとルート考えてたさ。四方の守り、霊道の封鎖、アカナギの封じ目、すべて終わった」 「??」  佐藤が何を言っているのかわからない。しかしアレに対抗する手段を行っていたというのは心強い。というか、今現在中嶋に対抗手段などあるはずもないので佐藤の対策だけが頼りだった。 「はいこれ持って、振り返って止まっててね」  何かを手渡される。それは鏡で、三十センチ四方の正方形をしていた。言われたとおり振り向きその場に立ち止まる。
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