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佐藤さんとサト君
中嶋聡、十四歳。幼い頃より幽霊が見え、誰に言っても信じてもらえず今まで友達はゼロ。誰にもわかってもらえない事や幽霊からのちょっかいにうんざりし、見事に性格が捻じ曲がって周囲に溶け込むことなく一匹狼状態で学校に通っている。
家族との関係も最悪なので家にはあまり帰らず夜プラプラしていれば、年上のヤンチャそうな連中に態度が生意気だとかなんとか難癖をつけられよくトラブルに巻き込まれる。ただし喧嘩が無茶苦茶強いので、一対多数で相手が武器を持っていてもだいたい一人でなんとかなる。
ただ今回は少々やりすぎた。四人の大学生に絡まれ、反撃をしたのはいいが相手が骨折をして警察を呼ばれてしまった。相手が悪くても怪我をさせたのは中嶋ということで、警察署でこってり絞られる事となったのだが中嶋が中学生という事と、状況を見ても正当防衛ということと、中嶋のまったく反省していない態度に警察官も頭を抱えていた。
椅子に座りふんぞり返りながら警察官の話をまったく聞かず、早く終わらないかなと思っていると部屋に一人の男が入ってきた。
「こんばんはー、引き取りに来ましたー。だめだぞーヤンチャしたら、帰ったらお母さんにたっぷり叱ってもらいなさい。じゃ、帰ろうか」
「……」
男は中嶋の腕を掴むとそのまま引きずるようにして連れ出す。警察官がまだ終わっていないと止めるが、なんやかんや言いくるめてあっという間に警察署を出てしまった。
ズンズン歩く男にしばらく大人しくついていったが、警察署から離れたところで腕を振りほどく。
「……で、アンタ誰」
まるで父親か何かのような雰囲気で中嶋を連れ出した男はまったく見覚えがない。抜け出せそうなので大人しくつれて来られたが、何故自分の事を知っているのかなど疑問はいくつかある。
「通りすがりの何でも屋です。名前はー……あー、じゃあ佐藤一郎でいいや。佐藤さんって呼んでね」
「……」
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