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ひとまず解決
きゃっきゃとはしゃぎならが子供達は光の方向へと走りだし、そのまま光の中へと消えていった。しんと静まりかえり、全員が立ち上がって消えていった方を見る。
「子供達は成仏したね、気配が消えた」
清愁も途中から取り出していた数珠をしまいながら微笑む。中嶋はふうっと息をつき、総弦は無言のまま一華にチョップをかました。
『いった!』
「調子に乗ってんじゃねえぞ」
『聞こえないから聞こえないって言っただけです~! あそこでグダったら締まらないでしょ!』
「人が恥ずかしい思いしてセリフ言ってんだから察しろよ!」
「あんなの恥ずかしがったほうが負けだ。それよりお前、あの程度のマントラ跳ね返すこともできないのか? なっさけない……父ちゃん涙出そうだ」
両手で顔を隠して泣く真似をすると総弦がフンと明後日の方向を見る。そのやり取りを見ていた中嶋がくくっと笑った。
「跳ね返せなかったんじゃなく、跳ね返さなかったんだよなー? いくら保護がかけられてるっつっても子供達にどんな影響あるかわかったもんじゃないもんな、子供の霊には心優しい総司君?」
ニヤニヤ笑って言えば目を吊り上げて中嶋に食って掛かる。
「ちげーよ! あっちのマントラのが長くてめんどくさかっただけだ! つーか何で俺のことに詳しいんだよキモチワリィな!」
「しっつれーな。お前がわかりやすすぎるだけだ」
中嶋が総弦の事を知っているのは当然子供の頃会って話をしたことがあるからだ。素直にそう言えばいいのに中嶋はそれを言おうとはしない。何か言えない理由があるのかもしれないが。
『良いコンビですよね、サトちゃんと総弦さんって。っていうか、総弦さんって総司って言うんですか』
素朴な疑問を口にすると総弦の変わりに清愁が「ああ」と教えてくれた。
「総弦は僧侶としての名前だよ。得度っていう、出家する儀式の時にあげるもんなんだけどコイツはその辺曖昧でやってないんだよね。四代前の住職の弦の字をくれてやったっていうのにまーだこんな状態だし」
「継がねえっつってんだろうが!」
「言うのは自由、現代において信じられるのは法律と証拠です。ありがたやありがたや」
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