67人が本棚に入れています
本棚に追加
南無南無と両手を合わせて言う父に悔しそうに食って掛かる息子。なんだかんだで仲がいいように思えた。中嶋は二人の様子を楽しそうに見ていたが、思い出したように言った。
「いろいろと残った事はありますが……まあいいでしょう、今回は」
「そうだな。ひとまず目標は達した。道祖神も新しいのを設置しないと」
肝心なところはわからないままだ。子供達の死因もそうだが最大の謎は「ハルちゃん」の正体とその目的だ。霊道をパトロールするように言ったのも歌やマントラを教えたのもハルちゃんで間違いない。おまけに子供達には強力な保護がかかっていた。外部の声が聞こえないというものだったが、意識をそらすことで簡単にそれが破られたのだからどちらかというと暗示のようなものだったのかもしれない。
子供達の様子からは自分達が死んだことに気づいていないようだった。家に帰ることやお腹が空かない事を疑問に思わないくらい、ひたすら歌を歌って見回り続けるよう仕向けられたように思える。
そこまでして霊道を浄化していた理由はわからない。ただ使っている歌自体は悪いものではなくても、周囲に多大な影響を及ぼしていた事を考えれば決して良い目的ではない。
『この先同じ様なこと起きないでしょうか。また子供が利用されるようなことは』
「そればっかりはわからんな。この辺を少し注意してみておく必要もあるし、ちょっと対策をしておく必要もある。まあそれはこちらの仕事だ、あまり気にする必要はないよ」
清愁の言葉に総弦はフンと小さく息をつくだけだった。絶対手伝わされるだろうに、いつもなら嫌だのなんだの文句を言うはずが何もない。
『そういえば詐欺嫌いの総弦さんは今回の作戦良かったんですか? 子供達に噓ついてノリと勢いで成仏させちゃいましたけど』
「良いも何も、アレが一番いいだろ。ガキに説法言い聞かせてどうなるっつーんだ。そんな余計な事知る必要なんざない。あの世に逝った方が良いに決まってる」
最初のコメントを投稿しよう!