その夜

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 清愁はやれやれといった様子で床に転がる息子を跨ぐと席に戻り再び酒を煽り始めた。 『あ、あの……大丈夫なんですか』 「平気平気、どうせ明日になったら覚えてないよ。酒の飲み方もわからんアホはこれで十分だ」 「ちなみに今彼はなにを?」 「不動明王だね」 「ああ、確かにアホだなそりゃ」  呆れた様子の中嶋と清愁。もはやこのあたりの会話が分からないのは今回何度もあるので一華は突っ込まない。何かすごい技をかけようとして父親に蹴りを入れられたんだろうということさえわかっていればいい気がした。  結局その後は中嶋も酒を切り上げ、清愁の勧めもあって寺に泊まることとなった。中嶋は客間を使わせてもらうことになり、風呂に入ると言って部屋を出て行った。総弦は畳に転がされたままとなり、一応清愁が毛布をかけてやる。その様子を見ながら一華は気になっていた事を聞いてみた。 『サトちゃんって高校生の時にここに来てたんですよね? 総弦さんとも会ってるって言ってたし』 「ああ、佐藤の紹介でね。元々は佐藤と私が知り合いなんだよ」 『へえ、霊感を持つもの同士知り合った感じですか』 「いや、若い頃にゴルフクラブで戦った事をきっかけに知り合った」 『……ゴルフクラブって戦う道具じゃないと思いますけど……』 「アレ結構殴りやすくてね」 『あ、いいです詳しい描写は。そうじゃなくて、小さい頃の総弦さんにも会ってるっていうので。言えばいいのになあと』  詳しい話をされないよう途中で言葉を遮って言えば、清愁はふむ、と腕を組んで考え込む。そして昔話をしようと切り出した。
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