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「で? アホな事やろうとしたけど結局どうだったんだ」
清愁が問えば、戒縁はあっはっは、と豪快に笑いながら言った。
「無理、なーんもわからん」
「くたばれ」
息子と孫の声が見事にハモる。清愁に至っては聞いた事のないドスのきいた声で一華はビビった程だ。清愁ははあっと大きくため息をつくと小さく首を左右に振る。
「親父も衰えたもんだ」
「失礼なこと言うんじゃないわい、バカタレ」
何事もないような親子の会話だが、戒縁は袖の中から何かを取り出し清愁に投げつける。清秋は体の位置はそのままに首だけを右に避けた。するとドガッと大きな音を立てて、避けた場所に何かが突き刺さる。
「独鈷を投げるんじゃない、まったく誰が一番罰当たりだよ。三つの中じゃこれが一番高いじゃないか」
『いやいや、突っ込むところそこ!?』
「慣れろ一華、これがこの一家の日常だ」
中嶋が冷静に突っ込みをいれ、立ち上がって戒縁に近づく。中嶋を見た戒縁は手を左右に振った。
「あ、お前さんの乳はいい」
「何の心配してるのか知りませんが言われるまでもなくそんな事させるつもりありません。そんなに乳が揉みたいならマザー牧場でも行ってください」
「イラついたらブン殴っていいよサト君」
「殺していいぞ」
清愁親子の肉親と思えない提案に中嶋は首を振る。
「それもいいです。さっきの身のこなしからすると絶対当たらなさそうだし。そうじゃなく、わからないというのはどういうことです。全く何も見えないのですか」
中嶋が問えば先ほどのふざけた空気からわずかにまともな空気に戻る。一華も戒縁を見つめた。
「いや、霊視自体はできたんだが一華ちゃん自身の事はわからん。見えたのは家族の様子だけだな」
『え、家族の様子も見えるんですか』
「言葉で説明するのは難しいんだがな、霊視っつーのは要は魂と魂の繋がりだ。縁があれば血縁者の様子や家、土地なんかは見えるぞ。だからこそ君自身のことがわからんのが不思議なんだ」
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