霊視

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「その取り柄さえ生かしきれてないお前に言われる筋合いないわい、バーカバーカ。まあ怪しい術や強力な保護かけられてる様子もないし、呪われてるとかそういうのはないんじゃないのか。何なら今お前に呪いでもかけてやろうか」 「あ、それいいな。自力で呪い解いてみろ、じゃなきゃ死ぬ。これくらいすればちったぁ真面目に修行するかもな」 「ああ!?」  そんな三人の様子を見ながら一華と中嶋は静かに言葉を交わした。 『あれ止めないとそろそろ喧嘩始まらないですか』 「俺にあの三人止められるわけないだろ。総弦は空手やってたらしいし戒縁さんと清愁さんは生きたキラーマシンだぞ、一瞬で負けるわ。ほっとくに限る」  中嶋はあくまで喧嘩が強かっただけだ。一応カンフー映画にハマって少林寺拳法を習ったことがあるが、実はその師匠が清愁だったりする。文字通り触らぬ神に祟りなしといったところか。はは、と一華が乾いた笑いを漏らすとようやく話がまとまったのか三人の会話が落ち着いた。代表して清愁が一華に言葉をかける。 「結局よくわからん、ってのが結論。何か理由があってこうなってるのは間違いないんだが、その理由に結びつく特徴というものがまるで感じられないんだ」 『そうですか……』 「まあまあ。坊主の威信にかけて出来る事は協力するから何でも言ってくれ。ロクデナシのクソ坊主揃いだけど、経験や能力は生かせるから」  清愁の言葉に一華だけでなく中嶋も頭を下げた。 「すみません、そうさせてもらいます」 「おう、佐藤にもよろしく。相変わらずそこら辺フラフラしてるんだろ、見かけたら柱にでも縛り付けておいた方がいいよ」 「それができれば苦労しないんですけどね」  清愁たちにお礼を言い、中嶋と一華は寺を後にした。珍しく口数の少ない一華に中嶋は問いかける。 「どうした」 『いえ……。家の様子わかったのが本当に嬉しかったんです。どうしても勇気でなくて見に行けなかったけど、元気でやってるなら良かった。皆ちゃんと幸せになっていってるんだなーって』 「失った悲しみはすぐには消えないだろうけどな。年月が経てばまた昔を思い出して懐かしむ余裕が出てくるだろ」 『そうですね……。あの子達も次生まれてきたら、もっと幸せになれるといいですね』 「ああ」
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