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魔物にも序列はあって、僕は下っ端だ。同じ種の魔物のなかでも、下っ端なのだ。
ゆえに、呼びこめる魔物も弱っちいやつばかり。経験値の高いやつを呼ぶのは、上位の奴らの仕事である。
くそう、僕だって銀色に光るメタリックなやつ呼びたいよ。
ガサガサと音がして、人間の男たちが現れた。三人組の若い冒険者だ。
レベル上げに来たのだろう。たしかにここはいい狩場だ。いや、僕たちにとっては殺される場所なんだけど。
「おい、ブラッディ・ハンドだ。早く倒さないと仲間を呼ばれるぞ!」
そう。僕のような手の形状をした魔物は、『ブラッディ・ハンド』と呼ばれている。以前、冒険者が落としていった魔物図鑑を見たところ、由来が書いてあった。
なんでも、イカれた猟奇殺人者が、自身がサツガイした相手の右手部分をコレクションしていたらしい。
獄中で自死した際には、自身の右手を切りつけており、身体から離れたその右手だけが行方不明。以降、動く右手に斬りつけられる事件が勃発したとかなんとか。
えええ、このドロっとしたの、泥じゃなくて血だったのかよ。
僕は恐怖したね。いや、僕自身のことなんだけどさ。
ブラッディ・ハンドは群れで行動する。
なにしろ殺人鬼のコレクションと言われているから、団体行動なのだ。そして、自分と同じ型の魔物を呼んだり、別種族の魔物を呼んだりする。
でも僕はよく失敗する。仲間を呼んでも誰も来ないことが多い。
他のブラッディ・ハンドがゴーレムとか呼ぶかたわら、僕ときたらスライム一匹呼べやしない。
ここでも落ちこぼれの劣等生。
転生してもパシリの人生。
先輩の言うことは絶対です。
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