みちる

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みちる

 腕の中で柔らかく眠る我が子の重みが、愛おしい。この子が私のお腹の中にいたなんて信じられない。  この子はこれから先、たくさんの楽しいことと辛いことを重ねていくでしょう。それでも、エゴで生まれたあなたを、私たちは幸せにしなくてはなりません。それが私たちの責任であり、幸福でもあります。  人間は誰しもひとりになりたくはない。その反面、辛いことが起きる場所から逃げたくもなる。その気持ちは何も間違ってない。  時には全てを捨てて孤独と共に生きる方が楽だと思うこともあるでしょう。それでも私は捨てるよりも拾い集める喜びを、あなたに知って欲しい。  苦しかったら逃げてもいい。でも、本当に大切なものと巡り会ったとき、それを追いかけられる勇気と知恵を持った子になって欲しいの。そしたらきっと、あなたの周りは素敵なものでいっぱいになるはずだから。  今のあなたにはまだ理解できないでしょうけど、何度だって伝えるわ。これから先も何度だって呼び続ける。あなたの人生が幸福でみちるように。
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