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おまじない
僕は本当にかっこ悪い。嫌なことがあればすぐに泣いちゃうし、言い返したくても言い返せない。今だってなんにもないところで転んだ。左膝は血が流れて両方の手の平もすりむいて血が滲んでる。痛みと情けなさで涙が出る。
ここにうずくまってたって仕方ないのはわかってる。でも体が言うことをきいてくれない。そんな自分にまた涙がこぼれる。
「ケガしてる。痛いの?」
上から聞いたことのある声が聞こえた。見上げるとクラスメイトの相沢さんが心配そうな顔をしていた。
「うん、痛い、けど……」
「ちょっとまってて」
そう言ってランドセルをごそごそとあさりだした。僕はその様子をただ見ることしかできない。
「あった。これ、はってあげる」
ランドセルについたポケットの奥からばんそうこうを取り出した。ピンクに白い水玉もようのかわいらしいものだ。包装をていねいにはがして優しく僕の膝に置いた。
「これはね、ばい菌が入らないようにするものだけど、おまじないでもあるんだよ。早く治りますようにってね」
その笑顔は夕日に照らされてよく見えなかった。それでも、いつの間にか涙は乾いていた。
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