めぐる

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めぐる

 童話中のお姫様が羨ましい。最高にみち足りたハッピーエンドのまま、時が止まっているのだから。  現実はそうもいかない。万物は流転する。良いことも悪いことも、永遠には続かない。今、私が抱えている幸せだって同じだ。いつかは終わって苦しく思う時間がやってくる。それが何よりも恐ろしいの。  それならいっそ、今のうちに、全てなかったことにできれば。  ふいによぎった刹那的な考えに、希望を感じてしまう。軽い気持ちで言語化した思いは、現実味を帯び重くのしかかる。体の芯は熱いのに指先が冷たい。唇が震える。行き場のない感情が体のあちこちに表れる。  ぼこん。下腹部からの優しい刺激で我に返る。  私を頼ってくれる子がいる。私を支えてくれる人がいる。これから先、不安でいっぱいだ。でも、きっと大丈夫。私はひとりじゃないから。
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