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ムーンライトのその先へ
冷たい風が吹き抜ける川の上、ただ無防備に立ち尽くす。氷のような手すりに体を預けて何とか直立二足歩行を保つ。
川面にはまん丸よりも少し欠けた月がゆらゆらと揺れている。月並みだけどくらげみたいだ。
瞳からひとすじ涙が流れて、落ちていく。この悲しみは川の水と溶けあって、はじめからなかったことのように消えてしまう。そういえばくらげも寿命を迎えると、同じように水に溶けて消えてしまうと聞いたことがある。
あなたのためのこの思いが、そんな風に消えてしまうのなら、どれほど楽だろう。
私たちはいつもすれ違ってばかりだった。それでも私はあなたが好きだったし、あなたも同じだと思ってた。信じていたの。
でも今なら分かる。信じていた、なんて綺麗な言葉で取り繕っていただけ。それがただの傲慢であることに気づくことができなかった。
顔を上げると本物の月が冴え渡る。その美しさに思わず手が伸びる。届かないと分かっていても、その手を下ろすことはできなかった。
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