君のためにできること

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君のためにできること

 どうして辛い思いをしてる人に「今は辛くてもきっとこれからいいことがあるよ」って言うんだろう。今が辛いって話をしてるのに、未来の話にすり替えるのはずるいと思う。ショーケースの中で光るトランペットを眺める。  まあ、そういう言い方をする人は悪い人ではない思う。少し先に起こるであろうことが、嫌で苦しくて、逃げたくなる。そんな気持ちへの理解が浅いだけ。  俺はそういう気持ちがよく分かる。そうは言っても全く同じわけはないし、ひとりの人間を完全に理解することはできないから、あくまで共感できるってだけなんだけど。  でも、俺だからできることがあるはずだ。あの子がほんの少しでも前を向いて、今を楽しめるように。そんな逃げ場を作ってやりたい。どこまで助けになれるか分からないけど、いつかここに頼らなくていいくらい良い友だちと楽しい時間を過ごせるように。俺にできることをやってみよう。 「おい、シュウ! ちょっとこっち来てくれ」 「今、行きます」  俺は優しい温もりの残るショーケースを後にし、店長のもとへと向かった。
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