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クランベリーパイ
あなたは嘘吐きよ。帰ったら一緒にクランベリーパイを食べようって約束したじゃない。
強がりなあなたが珍しく甘えてくれたものだから、はりきって焼いたのよ? 特別綺麗でよく熟れた実とジャムを、バターをたっぷり練り込んだパイ生地敷き詰めて。残った生地で網みたいに蓋をした後は仕上げにツヤ出しの溶き卵。
あなたの好きな私のクランベリーパイ。
ひとりで食べても味がしないの。湿気ったパイ生地に歯を押し込む、じっとりとした感触しか分からない。
ここにあなたは眠っているのかもしれないけれど、よく響く暖かい声も不器用な笑顔も、何ひとつ見当たらない。
お願いします、神様。もう一度だけ彼に会わせてください。せめてひとつだけ、お別れさせてください。
私を愛してくれてありがとう。あなたと過ごした日々はこの上なく幸福でした。そう伝えたいのです。
頬を伝う涙は、供えられたかすみ草に染みこんでいった。
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