超短編詰め

All of me

　長所と短所、志望動機、学生時代に頑張ったこと。面接で好印象を得るために予め答える内容を決めておく必要がある。こんな質問、準備してなきゃ答えられるはずがない。

　そもそもたっぷりと時間とかけて机に向かったって、納得のいく模範解答が見つかるはずはない。私は一体どんな人間なのだろう。

　考えるほど分からなくなっていくので、とにかくがむしゃらに埋めてみることにした。面接官が求めているであろう私を切り抜き、書き込む。私らしいと思える私、ちょっとだけ見栄を張った私、綺麗事をまとった嘘吐きな私。

　切り離されたいくつもの私が、紙の上に確かに存在している。眺めてみても模範解答なんてやっぱり分からない。

　それでもひとつだけ分かったことがある。紙の上にいる私はもれなく私だ。正解なんてない。真実も嘘もひっくるめて私という存在だ。

　急に肩の力が抜けて体が軽くなった。たくさんの私が貼り付けられた紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱へ投げ込む。

　よし、書き直そう。次はきっと上手く書けるはずだ。