劣勢彼女

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 私の3つ下の彼は、スーパーハイパーウルトラアルティメットに奥手な男の子です。  まじで「この子は男なのか?」って疑っちゃうくらいに超絶奥手な可愛い彼なんです。 (それか私に女性としての魅力がないのかもしれない……)  もう付き合ってから二年ちょっと経つってのに、まだ手の一つすら繋いでないんです。  そんなんでハグとかちゅーとか……。もちろんその先もまだなわけで……。 「えっ?」  だから、今日……。 「な、なに……?」  私の家にて、死ぬほど奥手な彼をベッドに押し倒しました。  カーテンに閉ざされた部屋の中を照らすのは、ベッドの横で仄かに灯る間接照明だけ。  夜中っていうこともあって、聞こえるのはお互いの微かな吐息だけ。それくらいに静かだ。  こんだけあれば、雰囲気としては完璧なはず。  私の下で目を泳がせて慌ててる彼に対して、優勢を取った私はそのまま己の意思に従って思いを吐露する。 「全然ちゅーしてくれないから私からするの」  指を絡めた状態で握った彼の手を、さらにぎゅっと強く握る。 「えっ……!」  案の定、彼はその可愛い顔を真っ赤にしてあわあわしている。  完全に主導権を得た私は、優勢のまま、奥手な彼に究極の二択を押し付けた。 「ちゅーが嫌だったら、思いっきりぎゅーってして? どっちか一つでいいよ?」  もう付き合って二年も経った。これくらいおねだりしてもいいと思う。ってかしろ。早くしろ。私はいつでもウェルカムだ。  それでも、超絶奥手で恥ずかしがりやな彼は、私と目も合わせないで口を閉ざしたまま。 「……」  やっぱり、もう潮時なのかもしれない。  ここまでしておいて、二年も一緒にいて、何も進展がないなら、お互いに別の道を進んだほうがお互いのためだ。  それもこれも、私に、魅力が足りなかったのがいけないのだろう。  もう……終わろう……。 「……」  と、私が体を起き上がらせようとした瞬間、彼がぼそっと呟いた。 「いやだ……」 「え?」  そして、覆い被さっている私の体を細い両腕がぎゅっと抱き寄せる。 「うわっ」  次の瞬間、不意をつかれた私の耳元で、彼は妖艶に囁いた。 「どっちかなんて、いやだ……。ぎゅーもちゅーも、どっちかじゃなくて……したい……」 「え゛ッ……!」  優勢を取っていたはずの私の体が、急にどんどん熱くなっていく。 「今までは、恥ずかしくて、怖くて、全然できなかったけど……。いいんだね?」  身震いしてしまうほどの艶かしい彼の声が、私を惑わしてくる。  とはいえ、ここまで仕組んだのは私だ。  今更ひよって引き下がるわけにはいかない……。 「いい、よ……」 「ふふっ。今夜は寝かさないよ?」  私のせいで、女の子かと見間違うほどに可愛かった彼が、ついに立派な一人の男に変身してしまった……。 「お、お手柔らかに、お願いします……」  月明かり輝く今日の夜は、とっても長くなりそうだ。
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