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仁と凛子
大学寮のポストを開けると、チラシが数枚足元に落ちた。溜め息を吐きながら拾い上げ、その中に嬉しい便りは紛れてないかと探す。ーと、次の瞬間、凛子は紙をまとめて手の中でグシャグシャに丸めた。そのまま項垂れて4階までノロノロと登る。
重みで形を変えたリュックをドサリと足元に置き、また盛大に息を吐く。キッチンの隅の、小さな食器棚の扉を開けて顔を突っ込むと、奥の奥に手を差し入れてやっとカップ麺を取り出した。
凛子はインスタント麺にお湯を注ぐと、長い髪を無造作に後ろで一つに束ね、アップライトピアノの蓋を開けた。仏頂面がピアノの鏡面に映る。
黒鍵のエチュード。
3分弱の曲、鍵盤の上を軽やかに指が駆ける。
それを弾き終えたらカップ麺の食べ頃だ。
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