山田太郎で溢れた世界【マルチ投稿】

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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ……のだが。 「なぁ、今日とうとう新しいモデルが新発売されたな!」  隣に座っていた久山に話しかけられた鈴木は、見せられたタブレットに目を見開く。  タブレットに映っているのは、小柄な女の子。  小柄な体に地味目なスーツ。黒髪のおさげに、幼い顔立。  そう。先ほど、そのものだった。 【新モデル【山田花子(やまだはなこ)】本日発売! 【山田太郎】モデルに馴染めない人もこれなら安心! お値段は~】 「お前見たか? アマゾンで事前予約できるから、昨日の夜に手に入れて早速レビュー動画をあげているヤツもいるんだぜ」 『【山田太郎】になるのも、元の自分と違うから抵抗があるし』  彼女が言った本当の意味は?  彼女は、いや、もしかしたら、彼なのかもしれないけど。  「…………」  黙り込んだ鈴木に気付かず、久山は「ようやく女の子が拝めるな~。よかったな」と話しかける。  鈴木はそれどころではない。  もう、この世界はもとに戻らない予感がして、【山田花子】の顔をした絶望感が、鈴木の正気を削ってくる。 ――ねぇ、君は今、どこにいるの?  耐え切れずに、鈴木は気絶した。 【了】 0a8a73c4-0160-4642-aec6-7841b54c95d0
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