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……のだが。
「なぁ、今日とうとう新しいモデルが新発売されたな!」
隣に座っていた久山に話しかけられた鈴木は、見せられたタブレットに目を見開く。
タブレットに映っているのは、小柄な女の子。
小柄な体に地味目なスーツ。黒髪のおさげに、幼い顔立。
そう。先ほど、鈴木が道を教えた女の子そのものだった。
【新モデル【山田花子】本日発売! 【山田太郎】モデルに馴染めない人もこれなら安心! お値段は~】
「お前見たか? アマゾンで事前予約できるから、昨日の夜に手に入れて早速レビュー動画をあげているヤツもいるんだぜ」
『【山田太郎】になるのも、元の自分と違うから抵抗があるし』
彼女が言った本当の意味は?
彼女は、いや、もしかしたら、彼なのかもしれないけど。
「…………」
黙り込んだ鈴木に気付かず、久山は「ようやく女の子が拝めるな~。よかったな」と話しかける。
鈴木はそれどころではない。
もう、この世界はもとに戻らない予感がして、【山田花子】の顔をした絶望感が、鈴木の正気を削ってくる。
――ねぇ、君は今、どこにいるの?
耐え切れずに、鈴木は気絶した。
【了】
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