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村の人々は、昔より箱をつくることを生業としていた。 一言で箱と表現するにしても、その用途は様々であり、職人の腕によって箱の強度や精巧さは異なる。 そして、その箱の大部分は、寺社仏閣の神殿などで奉納品を納めることに使われていた。 正確に言うと、表面的には奉納品と表現していた…と説明する方が分かりやすいのかもしれない。 つまり、実際は奉納品ではなく、災いをもたらすものが封じられているのだ。 具体的には、災害や疫病、戦争など人に災いをもたらす種のようなものである。 その種は、とても強力な力を秘めており、人間が作る箱には納めることができないのだ。 そのため、特別な箱が必要になる。 特別な箱… つまり、俺達のような異形が作る箱だ。 「異形か…」 我ながら、不思議な性質だと思う。 災いの種が秘める力は異形がもつ力に等しい 両者がバランスよく抑えあうことで、箱の形を保つことができる。 一言で異形といっても、その特徴は様々だ。 なかには、人間が想像する化け物の様な姿で、宇宙や自然と対話をしたり、気象や実態を変化させることができる異形もいる。 まるで魔法や超能力のような力をもつ存在なのだ。 そして、俺の一族も例にもれず、不思議な力があった。 すなわち、髪を自在に操る力。 髪で編んだ箱で、災いの種を封じるのだ。 基本的には… 編み上げる箱は、災いを封じる用途のみに使われるわけではない。 災いではなく… 俺は、視界の隅に見える茶褐色の箱に視線を移した。 その箱には、色とりどりの花が添えられていた。
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