49人が本棚に入れています
本棚に追加
夫からのメッセージ
「今どこにいますか?」
腰のあたりで、鈍く響くメッセージ音で目が覚めた。
腕を縄で拘束され身動きが取りにくい。
私は埃だらけの汚い部屋に転がされていた。
コートが真っ白に汚れていて、この部屋が何年も使われていないことは明白だった。
どうにかコートの中に隠れていたスマホを取り出す。
目の前のスマホの画面に表示されたそのメッセージは夫からだった。
さすがの夫も、私の異変に気付いたみたいで安堵する。
知らない部屋はコンクリートがむき出しで、ドアは一つしかなくピッタリと閉じていた。
耳を澄ますとドアの外から、声を潜めた誰かの声が聞こえる。
会話からわかったのは、私は廃れたビルの中にいるということ。
割れた窓から月だけが見えた。
周囲のビルよりは高いのか、無いのかも分からない。
現実離れした場所だと思った。
なのに、ミネラルウォーターの入ったペットボトルが転がっているのが妙にリアル。
スマホの画面は、メッセージが表示されては暗くなる。
私は、それをスマホの電源が切れるまで見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!