49人が本棚に入れています
本棚に追加
妻からのメッセージ
「今どこにいますか?」
三日ぶりに出した声はしゃがれていた。
スマホの電源も切れて、財布もなく、やっと帰ってこれた。
まず家に入る方法を悩んだけれど、必要なかった。
我が家が見えたと思えば、無精髭を生やした情けない顔をした夫の姿。
私に気づかず、反対を向いて走り去るところを後ろから抱き止めた。
夫は、声も出ない様子だった。
夫のダランと下がった腕がゆるゆると持ち上がり、彼の胸に回った私の手に触れる。
感触を確かめるように、大切そうに触れてくる。
ゴツゴツした骨っぽい手も、手の隙間から流れてくる彼の涙も冷たいけど暖かい。
彼の背中におでこをくっつけて、深く息を吸い込む。
久しぶりに、本当に久しぶりに香る彼の匂いは、少しだけ酸っぱかった。
最初のコメントを投稿しよう!