ニグフバ

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 事務所に戻った中嶋はたまたまいた戸波にフォール会の情報収集を頼んだ。戸波は快く引き受け、早速パソコンを操作し始める。中嶋も周辺の地図を検索したが、まだウェブ上の地図は更新されておらずほとんどが更地のような映像だった。工事が繰り返されているので紙ベースの地図もおそらく同じだろう。結局自分の足で調査するしかない。三十分もしないうちに戸波が中嶋に資料を渡した。 「早いですね」 「いや、それだけ何もなかったって事。ちょっと手ごわいね」  苦笑する戸波の言葉通り資料は紙一枚だ。それは誰かのメールのやり取りだった。内容は簡単だ、電話番号がないがどうやって問い合わせるのかという質問に対して資料を送るから住所を教えて欲しいというやり取りだった。 「これ、もしかして信者とフォール会のやり取り?」 「そう、ひっかかったのがそれしかなかった。セキュリティの甘いフリーメールだったから上手くつかめたけど、他は全くだ。どうやらメールとかネットとか電子関係で連絡をしてないみたいだ」  文面にもあるように郵便などの資料配布をしているらしい。ということはおそらく広告なども新聞やチラシなどで行っているのだろう。アドレスがあったという事はどこかに載っていたことがあったようだが、日付は半年以上前で最近でもない。 「あ、ちなみに同じようなメールもあったんだけど」  これ、と差し出した紙は同じくフリーメールでのやり取りらしい。しかし内容はどんな女の子がいてどんなサービスをしてくれるのかという、まるっきりデリヘルのような内容だった。 「同じ名前のそういう店か、と思ったんだけど違うみたいだ。締めの文面同じ」  指をさした相手側からのメールは同じように資料を送るから住所を教えて欲しいというもの。どちらのメールも質問者が自分の住所を送信したところでメールが終わっている。 「なんか不思議な関連性だけど、サト君はどう見る?」 「これだけじゃなんとも。宗教を語ったデリヘルなのか、デリヘルを語った宗教なのか。いや、デリヘルはビルごと買わないだろうから、やっぱ宗教かな」 「宗教っぽくない宗教団体なのが不気味っちゃ不気味だな。カルト集団じゃなければいいね」  戸波に礼を言うとまた何かあったら言ってくれといいそのまま帰っていった。事務所には今中嶋しかいない、小杉は帰ったようだ。中嶋は引き出しから荒川特性の超小型カメラを取り出し状態を確認し始める。
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