ニグフバ

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『あー……大変ですね。総弦さんたちに除霊お願いしてみては』 「どこ住んだって同じだ、行く先々で何かしらはいる。その都度祓ってもらうわけにもいかないだろ。一応あっちだって商売だし、何回も頼む金ねえし」  言いながらいくつか目星をつけた物件に丸をする。一華が覗き込めばだいたいは家賃重視で選んでいるようだ。それ以外は特に気にしていないらしくLDKもバラバラだ。 『部屋選ぶのも他の人より苦労しますね。こんな事の繰り返しですかいつも』 「だいたいは所長とか清愁さんのくれる魔除けやらでなんとかなるんだけどな」 『魔除け……あ、そういえば佐藤さんから貰ったって言ってたのあったじゃないですか。珍しく効果バッチリだからっていつも持ち歩いてたやつ。アレがあってもダメだったんですか』 「……アレ壊れた」 『ええ、壊れたんですか?』  驚く一華はあまり深く突っ込まずに首を傾げる。お守りなど何をすれば壊れるのかなど想像もできなかった。もう一度雑誌を覗き込むといくつかの丸印をつけた物件の中で二重丸がついているものを見つける。そこを指差して一華が尋ねた。 『ここが本命ですか?』 「ああ、一応な。ここから近いし家賃も結構安い。後で実際に見に行って変なのいないか確認はするけど」 『あ、ここなら一度通った事あって知ってるし、変なのいないか見てきましょうか』 「別にそこまで……あー、やっぱ頼むわ。何もいなけりゃもう今日中に契約して引っ越したい」  完全に遠い目をしている中嶋を見て霊感のある人は本当に苦労が耐えないなあと思う。なんだかいつもより憔悴しているというか、弱っているようにも見えた。どうせ仕事がなければ自分にやる事はなくヒマなので提案したのだが、今回は世話を焼いておいた方が良さそうだ。 『んじゃ、行ってきます』  そういって一華は消える。二人のやり取りを聞いていた小杉は一華が消えるのを確認してから中嶋の方へと振り向いた。 「大丈夫ですか?」 「まあそんなに深刻じゃない。前からちょっとおかしな事はあったけど、事務所に泊まる事も多いからほっといた。そしたら悪化してた」 「ご愁傷様です。まあ引っ越すのが一番でしょうね、他の住人に怪奇現象ないなら。ところで……」  小杉が一呼吸おいた。次にくる質問はわかっている。 「佐藤さんから貰った魔除け、何で壊れたんですか」
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