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先ほど一華は何の疑問も思わずスルーした内容だ。いくら一華が霊とはいっても元々は霊感もなく危険な目に合うこともない人生を送っていた為、そこに違和感を覚えなかった。
普通なら壊れた事に対して仕方ない、で済ませてしまう。しかし普通ではない人生を送ってきた小杉には魔除けが壊れてしまうという、それも佐藤から貰った折紙つきの物が壊れるという事の重大さが身にしみてわかっている。先ほど一華と会話をした時小杉が一瞬顔を上げたのを見ていたので聞かれるだろうとは思った。
「なんかよくわからんバケモノみたいなのが道歩いてた影響で弾けた」
口調は冗談を言うようだが、その顔は真剣だ。その表情を見た小杉がわずかに驚き、心配そうに眉を寄せる。
「その事佐藤さんには?」
「一応メールはした。代わりの送るね、とは返事きたけどそういやまだ届いてないな」
「バケモノっていうのは具体的にはどういうものだったんですか。霊とかではなく?」
「見た感じは人間だけどな、俺にもよくわからん。今まで見たことないタイプだってことくらいしか。そいつが近くにいると生きててごめんなさいって言いたくなるほどその場に存在するのが辛くなる。小杉が会ったらぶっ倒れるかもな。いやむしろ小杉が弾け飛ぶかもな、冗談抜きで」
そんな会話をしていれば事務所に宅配業者が来て中嶋宛に荷物が届く。差出人は佐藤で三十センチメートル四方の小包だった。運んでくる時に中から硬いものがぶつかり合う音が聞こえるので、何かが複数入っているようだ。
「あ、なんかタイムリーですね。これお守りとかじゃないですか?」
「じゃあ小杉開けていいぞ、ついでに何か欲しいのあったらやる」
「え、いいんですか。これだけ大きい荷物だし何個か入ってそうですから、期待できるかもしれないですよ」
わくわくした様子で箱を開ける小杉は気づいていない。中嶋がうんざりした様子で荷物をゴミを見る目で見下ろしている事を。
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