ニグフバ

9/31
前へ
/61ページ
次へ
 ターゲットが利用している駅で待ち伏せをし、姿を見せたところで尾行を開始する。電車を乗り換え家とは違う方向の電車に乗った。男の性格は事前に妻からの情報で整理できている。  根は真面目で趣味もこれといってない。典型的な仕事人間で良くも悪くも日本のサラリーマンといったところだ。こういうタイプは仕事以外に息抜きのようなものがなく、ギャンブルやキャバクラにはまったりする。そして一つの事に没頭してしまう為なかなかやめられない事が多い。家に帰らないのなら他に行くべき場所があるということなのでキャバクラなどに行ってくれるとわかりやすいのだが。  しかし男は歓楽街から離れどんどん郊外の方向へと移動をし、とある駅で降りた。  尾行は一華が協力するようになってからずいぶんと楽になった。何せターゲットにとりつけばピッタリくっついて行く事ができるし、中嶋への報告も一瞬だ。すべてを一華に任せるわけにはいかないので中嶋も尾行はするものの、効率は格段に上がった。バレない確率ではなく見失わない確率の方だが。 『あれ、ここさっき来た場所』  不思議そうに一華が呟いた。男が降りたのは三件目の物件があった駅だった。まだ開発途中の場所なので夜人の姿は少ない。人通りのないところをついていけば本人も気づくだろうし、見かけた人も不信に思うだろう。以前なら細心の注意を払い相手と周囲に見つからないように追っていたが今は一華がいる。 「ちょっとまずいな。一華、追ってくれるか」 『はーい』  一華は男性にとりつくとそのままついて行った。中嶋はモール内のファストフード店に入り適当に時間を潰す。日中なら主婦や子供の姿があるのだろうが、夜八時ともなると学生がまばらにいるくらいだ。  コーヒーを飲みながら携帯をいじっていると一華が戻ってきて中嶋に憑依する。 (あの人宗教ビルに入ってった。でも変なの、私そのビルに入れなくて。だから中で何してるかはわかんなかった) (ふうん……? まあいい、今日はそれだけわかれば十分だ)  そう会話をすると一華が憑依を解く。中嶋はいじっていた携帯でその宗教を検索してみるが、まったく引っかからなかった。本当に新設されたばかりなのか情報がまったくない。しかし、それはある意味不自然だ。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加