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ふたりは電車に乗って二つ先の駅で降りた。いつも奈波が降りる駅だ。
奈波が心を病んでしまう前から、ほとんど毎日家まで送っているので、見慣れた景色が広がっている。
あとを尾けたまましばらく歩いていくと、大きなマンションに着いた。やはり行き先は奈波の家に間違いない。
ふたりがオートロック式のエントランスに入ったのを確認すると、近くの生垣へと走った。居ても立ってもいられず奈波へ電話を掛けてみたが、奈波は中々出てくれない。
しつこく鳴らし続けたあと、ようやく電話が繋がった。
「奈波! 今どこにいるんだ!」
焦ってしまい、思わず声が大きくなる。奈波を驚かせてしまっただろうか。しかし電話口から聞こえてきたのは、いつもの冷淡な奈波の声だった。
「彰人君……私は今家に帰ってきたところよ。何か用かしら?」
「『何か用』じゃない! なんで岡崎がお前の家にいるんだ!」
躊躇うことなくそう指摘すると、奈波は一瞬息を詰まらせた。
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