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その昔、人が治める大地には二つの宗教が浸透していた。 闇を忌み嫌い、太陽が天に登る時間だけを生きることを教えとする「光彩教」。 光を疎み、太陽が天から消えて仕舞った時間だけを生きることを教えとする「闇夜教」。 生と深く関わる場所にあるものを信仰対象とした宗教は驚くほど信者を増やし、いつしか国にまで発展したという。 ―――それが、今も存在する「昼の国」と「夜の国」の根本の部分だ。 「光彩教」も「闇夜教」もすっかり廃れて忘れ去られている。 それでも人々は、昔ながらの決まりに違和感を持つことなく、自らが生まれた国で生きる時間を定められ、生活し、狭いテリトリーでその生涯を終える。 生きる時間が違う人々とは干渉し合わず、隣の国の実情も殆ど知らず。 だからそれまで、一般庶民は自分が住んでいる国に「世界を永遠に昼にする」、「世界を永遠に夜にする」モノがあるだなんて知る由もなかった。 互いの国にある"それ"が力を相殺している所為で、自らが生きる時間が短くなっているという事も、勿論知らなかった。 夜の国の情報屋が、昼の国に潜入するまでは―――
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