11 救出

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11 救出

「ローザ、起きて下さい、大丈夫ですか…?」 う~ん…誰かがわたしを揺すぶっている…。でもまだ眠い…。 「ローザッ!」 いきなり大声で名前を呼ばれた。 「え?!」 ガバッと飛び起きると、薄暗く、だだっ広い部屋の中に私は転がっていた。そして目の前には私を心配そうにのぞき込む彼の姿があった。 「え…?あ?こ、ここはっ?!」 ガバッと起き上がり、辺りをキョロキョロ見渡すと、天井からほど近い場所に窓があり、そこからは月が見えていた。そして窓からは長いロープがぶら下がっている。 「ああ…目が覚めたんですね。良かった…大丈夫でしたか?助けに来るのが遅くなってすみません」 彼は私に手を差し出した。 「ここは一体どこなの?」 彼の手に掴まって立ち上がり、辺りをキョロキョロと見渡した。部屋の中はがらんどうで何も置かれていない。 「ここは町長の家です」 彼は私に言う。 「町長…?あ!そう言えば…気を失う寸前に私、町長の娘を名乗る女性に会ってるのよ!確か名前は…」 「しっ!」 そこまで言いかけた時、彼が静かにするように口に人差し指を1本立てた。 「ここはブギーマンのアジトです。この場所で戦うには分が悪いので今すぐ逃げますよ。さあ、早く僕の背中におぶさって下さい」 彼は背を向けてしゃがむと言った。 「え…?お、おぶさるって…?」 戸惑っていると彼が言う。 「早く!ローザッ!」 急かすような彼の口調に思わず私は言う通りに彼の背中に乗り、腕を回した。 「しっかり僕に掴まっていてくださいね?」 彼は言うと立ち上がり、窓から伸びているロープにぶら下がると、スルスルと昇って行く。 「ええええっ?!」 何と言う身体能力なのだろう。普通ならブラブラ揺れるロープにぶら下がって腕の力だけで昇るのすら至難の業だと言うのに、彼は私を背中におんぶした状態で軽々と昇り着り、右手でロープにぶら下がったまま左手で窓を開けて、そのまま窓から屋根に出た。 「キャアッ!」 彼におぶさったまま屋根に出た私はその高さに悲鳴を上げてしまった。何て高さなのだろう。落ちたら間違いなく死んでしまうのではないだろうか? 「ローザ。失礼します」 彼はいきなり私をお姫様抱っこすると、その目もくらむような高さの屋根から飛び降りたのだ。 「キャアアアッ!」 私は必死になって彼の首に抱き着き、目を閉じた。耳元では風を切る音がごうごうとなる。 ダンッ!! やがて物凄い振動が身体に響き渡った。 「…大丈夫ですか?ローザ?」 彼に声を掛けられ、恐る恐る目を開けると眼前に彼の顔が有った。 「な、な、何よ!こ、これくらい…な、何て事無いわっ!」 必死になって虚勢を張るも、私は内心彼の謎が深まるばかりで戸惑っていた。恐るべき身体能力…本当に彼は人間なのだろうか?しかし、彼は私の思いとは裏腹に人懐こい笑みを浮かべると言う。 「良かった…それを聞いて安心しました。これからブギーマンと戦うのに最適な場所に移動します。しっかり掴まっていてくださいね?」 「え?キャアアッ!」 彼は私の返事も聞かず、抱きかかえたままものすごいスピードで走り始めた。 「ど、どこへ行くのよっ!」 彼にしがみつきながら尋ねた。 「教会ですっ!ブギーマンの本来の姿は死霊ですからっ!」 彼は私を抱きかかえたまま、静まり返った深夜の町を教会目指して走り続けた―。
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