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6 ブギーマン
「え…?ブギーマン…?ブギーマンって何?」
すると彼は大げさなくらいに驚いた。
「えっ?!ま、まさか…ローザは『ブギーマン』を知らないのですか?信じられないな…。今や世界中で『ブギーマン』について騒ぎになっているのに…。この間まで僕がいた街でも新聞に載って大騒ぎになったんですよ?」
その言い方が何となく気に障り、私は言い返した。
「な、何よ!さては貴方この街が田舎だからと言って馬鹿にしてるでしょうっ?!」
「い、いいえ。馬鹿になんてしていませんよ。ただ…かなり驚いているだけです。何故この街では『ブギーマン』の存在が知られていないのかを。大体国をあげてお触れを出しているというのに…。それぞれ市長や町長、村長などに教会から知らせが届いているはずですよ?ひょっとするとこの街の町長が『ブギーマン』の存在を隠蔽しているのかもしれませんね…」
彼は考えこむように首をひねっている。
「ねえ、それよりも『ブギーマン』て何?教えてくれる?」
すると彼は今迄とは違い、急に顔つきが変わった。
「『ブギーマン』というのは恐ろしい悪霊のようなものです。実態というものが存在せず、霊体となって空中に漂っている。そして憑りつきやすい人間に憑依して、最終的には宿り主を殺し、その身体を完全に乗っ取ってしまいます。また『ブギーマン』は人の血肉を何よりも好み、4日に1回は血肉を食らわなければその肉体を維持できません。その為に人間社会に溶け込み、昼夜を問わず、飢えを感じれば人を襲います。そして僕は世界中に存在している『ブギーマン』を討伐する為にずっと旅を続けているのです」
「そんな…それじゃ…まさか…?」
私はその話を聞いて背筋が寒くなる思いがした。
「何か心当たりがあるのですか?」
彼は身を乗り出してきた。
「う、うん。実はこの街では3か月程前から人が突然行方不明になると言う事件が起こっているの。もう30人近く既にいなくなっているわ。ううん…本当はもっと大勢いなくっているかもしれない…。でもちょっと待って。さっきの話だと『ブギーマン』は血肉を食らうっていってたけど…それって…?」
すると彼は目を伏せると言った。
「…文字通り…人間を食べると言う意味です…」
え…?食べる…食べるって…そ、それじゃ…あの血だまりはやっぱりお父さんの血だったの…?!
「そ、そんな…っ!いやああああっ!」
私は頭を抱えて絶叫した。
「どうしたのですかっ?!ローザッ!!」
彼が驚いたように私を見る。
そ、そんな…!
母さんは半月ほど前に突然いなくなってしまった。そして父さんは3日前にいなくなってしまった。しかも…誰の血なのかは分からないが…勝手口を出たところで大量の血だまりが出来ていた。
そして血だまりの中に落ちていた父さんの帽子…!
「と、父さん…母さん…!」
見る見るうちに私の目に涙がたまり…。
「ウアアアアアアアンッ!!」
机の上に突っ伏して…人前だと言うのに泣き崩れてしまった。
「ローザ…」
突っ伏して泣く私の傍に、彼が近づいてくる気配を感じた。そしてそっと髪の毛に触れる。私は彼の温もりを傍で感じながら、いつまでも無き続けていた―。
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