◇#16. さまようこころ

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「いまは、わたしは、……蓮二だけのことを、見ていたいの。……他の男のことなんか考えたくもない」 『……加藤くんとも、浅葱さんとも、もうちょっと、……話し合ったほうがいいんじゃない? 浅葱さんはこのこと、知らないでいるでしょう?』 「……言う必要ないじゃん」段々腹が立ってきた。「麗奈はなんなの? べっつに……加藤くんが誰を好きであろうが彼の自由だし。わたしのことが好きならそれはそれでもう、……しょうがないじゃん。わたしは、蓮二のもの、なんだから」 『なんかその言い方……、無理して聞こえるよ。……望海。無理して、浅葱さんを好きだと言っていない?』 「――蓮二が一番なのっ!!」たまらず叫んでいた。「もう、……いいから。これ以上加藤くんのことでごちゃごちゃ言わないで。確かに彼は、幼少期から一緒で家族みたいな……特別な存在だけれど。……もう、……遅いの」 『望海……』 「心配しないで」とわたしは涙を拭った。「わたし、ちゃんと……蓮二と幸せに過ごしているから。彼のことが大好きなの。彼のことを、一番に、考えたいの。彼は……わたしにとって……本当に、大切なひとだから……」
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