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「ぼくにとって、主役はきみなんだから」とやわらかく微笑むあなた。「遠慮なんかしないで。ぼくときみの間柄なんだから……。お風呂、沸かしてくるね……」
そうして洗面所へと向かうあなたの背中を……悲しいような、切ない気持ちで、見守っていた。
* * *
「申し訳ない」
引っ越しの手伝いに来てくれた麗奈は改めて頭を下げた。「ごめん……加藤くんのこと。あんたが、忘れられないものだと思い込んでいて……加藤くんからも連絡があって。それで……二人とも愛し合っているのなら、そのほうが、いいかなあと……思ったんだ……」
「気にしないで」とわたしは手を振った。そして段ボールに、新聞紙で包んだお茶碗を入れていく。「にしても、家財処分しとかなくてよかったよ。一歩間違えたら家財道具ナッシングで引っ越すところだった。あのタイミングでよかったよ」
ふー、と息を吐く麗奈は、「……そんな減らず口叩く元気があるなら平気か……」
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