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「そんな。望海……」涙で顔をくしゃくしゃに歪めた麗奈は、「好きなんだったら。本当に誰が好きなのか分かったんだったら、ちゃんと……伝えなよ。言わないと相手には伝わんないよ?」
――昔、大恋愛をした彼氏を忘れ去られず、携帯の番号もLINEのIDもそのままにしている麗奈。もしかしたら彼から連絡が来るかも、と、ずっとずっと変えられないんだとか。――だから、加藤くんに、共感したのだろう。伝えずに終わった後悔を。持ち越して欲しくはないと。自分のように。
「もう、……決めたの」出来る限りに明るく笑ったつもりだった。「わたしは結局加藤くんが大切っていう本当の自分を蓮二に見せられないまんまだった。もっとちゃんと……彼に認められるような、素敵な女性になってから……もし、彼がわたしを許してくれるのなら……改めて彼に、向き合いたいと思うの。精一杯のわたしで」
「望海ぃー」わんわん泣く赤子のような麗奈。よし、よし、とわたしはそんな彼女の髪を撫でながら――蓮二とのめくるめく日々を思い返していた。
べろんべろんに酔っぱらったわたしを、『ばっきゃろ』と言いながらタクシーに乗せたこと。
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